会社のホームページも、広い意味ではオウンドメディアの一つです。そのうえで、会社案内のページと、お客様の困りごとに答える記事の集まりを比べると、いちばんの違いは読む人がその会社をすでに知っているかどうかです。ホームページは、社名や製品名を知っている人が「どんな会社か」を確かめに来る場所です。オウンドメディアは、会社を知らない人が自分の悩みを検索して、記事を通じて初めて出会う場所です。
この記事では、困りごとに答える記事の集まりを「オウンドメディア」と呼んで比べます。どちらが上ということはなく、役割が違うので、片方だけでは足りないことが多いのです。
読む人と、入ってくる入口が違う
違いを表にするとこうなります。
| 比べるところ |
ホームページ |
オウンドメディア |
| 読む人 |
会社を知っている人 |
会社をまだ知らない人 |
| 入口の検索語 |
社名、製品名 |
悩み、不具合、用語 |
| 主な中身 |
会社概要、製品、実績 |
疑問に答える記事 |
| 更新の仕方 |
大きな変化があるとき |
継続して足していく |
製造業の例で考えます。ある金属加工の会社を、取引先から紹介された購買担当が調べるとき、検索するのは社名です。その人が見たいのは、設備の一覧や会社の所在地、取引実績です。これはホームページの仕事です。
一方、別の会社の設計者が「ステンレス 溶接 焼け 取り方」と検索したとします。この人はその金属加工会社の名前を知りません。検索結果に、焼けが出る理由と取り方の違いを現場の言葉で書いた記事があれば、そこで初めてその会社に出会います。これはオウンドメディアの仕事です。
製品ページを増やしても、悩みで探す人には届きにくい
「うちはホームページに製品情報をたくさん載せているから十分」という声を聞きます。ただ、製品ページは製品名や型番で検索する人に向けたものです。悩みで検索する人は、まだ製品名を知りません。
私たちが立ち上げた転職比較や資金調達の解説サイトでも、ページの種類ごとに数えると、疑問に答える記事のほうが会社の紹介や一覧のページより検索に出やすい傾向がありました(立ち上げ間もない4サイトの実測)。同じサイトでは、「会社名+評判」のような社名を含む検索のほうが、一般的な言葉より先に順位が上がりました。名前を知っている人の検索は紹介ページでも拾える。名前を知らない人の検索は、記事で取りにいくしかない。私たちはそう読んでいます。
ホームページの「お知らせ」や「ブログ」はオウンドメディアになるか
置き場所ではなく、中身で決まります。
「夏季休業のお知らせ」「展示会に出展しました」が並ぶブログは、会社を知っている人向けの情報です。検索で知らない人が読みに来ることはまずありません。これはホームページの一部です。
同じブログ欄に「アルミの切削でバリが出る原因」「試作1個から頼める加工の種類」といった記事が並んでいれば、それはオウンドメディアとして働きます。今のブログを、お知らせ用と記事用に分けるだけで始められる会社もあります。
同じドメインに置くか、別に作るか
中小企業なら、今のホームページと同じドメインの中に記事の階層を足す形を私たちはすすめています。理由は2つです。
1つは、記事を読んだ人をそのまま会社の情報や相談の入口へ案内できることです。別のドメインにすると、記事からホームページへ移るたびに「どこの会社のサイトなのか」を読む人がもう一度確かめることになります。
もう1つは、管理する場所が1つで済むことです。サイトが2つになると、Search Consoleの登録も、リンクの点検も2倍になります。私たちは自社で23サイトを運営していますが、正直に言えば、サイトが増えるほど点検漏れが起きます。Search Consoleが同じページをhttpとhttps、wwwありとなしの4通りのURLで返していて、転送の設定漏れに気づいた、ということが3サイトでありました。
別のドメインが向くのは、会社名とは切り離して、困りごとの名前で技術相談の窓口を独立させたい場合や、業界全体の情報サイトとして育てたい場合です(製造業の例は技術相談サイトの型)。ただしその分、時間と手間は増え、検索に出始めるまでも長くかかります。
置くときのURLの形
同じドメインに置くなら、記事の場所をひと目で分かるようにします。たとえば次のような形です。
- 会社の情報:
/company/ /products/
- 記事のまとめページ:
/guide/
- テーマごとのまとめ:
/guide/welding/
- 個々の記事:
/guide/welding/yake/
テーマごとの親ページを置き、その下に記事をぶら下げる形にすると、Googleにも読む人にも「このサイトは何に詳しいのか」が伝わりやすくなります。作り方はハブページと階層構造の作り方で扱っています。
AI検索が広がると、この違いはどうなるか
ChatGPTやGoogleのAIによる概要に質問する人が増えても、役割の分かれ方は変わらないと私たちは見ています。
Googleは、AIによる概要やAIモードでリンクとして表示されるには、ページがインデックスに登録され、検索でスニペットを表示できる状態であることが必要だとしています(Google 検索セントラル「AI 機能とウェブサイト」)。AIが答えの根拠にするのは、結局はふつうのWebページです。
「ステンレスの溶接焼けはどう取るのか」とAIに聞かれたとき、根拠になりうるのは焼けの取り方を書いた記事です。会社概要や設備一覧のページが、その質問の答えとして引かれることは考えにくいでしょう。悩みに答える記事を持っていない会社は、AI検索でも出会いの場に立てません。
記事とホームページは、リンクで両方向につなぐ
同じドメインに置いても、記事とホームページがつながっていなければ、別々のサイトと変わりません。
記事の側には、最後に「この加工のご相談はこちらから」のように、相談の入口と、関係する製品や設備のページへのリンクを置きます。ホームページの側には、製品ページから「この材料でよくある不具合」のように、関係する記事へのリンクを置きます。製品を見に来た人が記事を読んで納得し、記事から来た人が製品を見て相談する、という行き来ができるようになります。
ここは私たちも失敗しています。新しい記事から古いページへはリンクを張るのに、古いページから新しい記事へ張り忘れる、ということを3回やりました。記事を1本公開したら、関係する既存のページにもリンクを足す。これを手順に入れておくと防げます。つなぎ方は内部リンクとアンカーテキストの付け方にまとめています。
ホームページを作り直す必要はあるか
多くの場合、ありません。記事を置く場所を足し、記事の最後から相談の入口へつなげれば始められます。
ただ、次のどれかに当てはまるなら、先にホームページ側を直したほうが早いです。
- スマートフォンで見ると文字が小さく、横にスクロールしないと読めない
- 問い合わせの入口が電話番号だけで、フォームがない
- httpsになっていない
記事で人を連れてきても、たどり着いた先で読めない、連絡できないのでは意味がありません。オウンドメディアを始めるべきか、そもそも自社に向いているかの判断はオウンドメディアが向いている会社・向かない会社に、始める順番はオウンドメディアのカテゴリにまとめました。
費用の見当をつけたい場合は、作業ごとの内訳をオウンドメディアの費用は何で決まるかで分解しています。私たちにご依頼いただく場合は、今のホームページを活かしたまま記事の階層を足す形から相談できます。