オウンドメディアが向いているのは、お客様が買う前に検索で調べていて、その疑問への答えを自社の人が持っている会社です。反対に、お客様が検索しない商売や、答えを持っていても新しいお客様を必要としていない会社には向きません。
業種で決まるわけではありません。同じ金属加工でも、向く会社と向かない会社があります。この記事では、判断に使える問いと、向かない場合に何をすればいいかを書きます。
向いているかを判断する6つの問い
次の問いに、はい・いいえで答えてみてください。はいが多いほど向いています。
- お客様は、発注や購入の前に自分で調べているか
- お客様から、同じ質問を何度も受けているか
- その質問に、社長や技術者がすぐ答えられるか
- 商品やサービスの説明に手間がかかるか
- 新しいお客様を増やしたいと考えているか
- 結果が見えにくい期間を、半年以上待てるか
1から4は「書けるか」、5と6は「やる意味と体力があるか」を見る問いです。
お客様は、買う前に調べているか
いちばん大事な問いです。お客様が検索しない商売では、どれだけよい記事を書いても読まれません。
製造業の場合、検索しているのは購買担当より設計者や技術者であることが多いです。「アルミ 切削 バリ 原因」「試作 樹脂 少量」のように、不具合の言葉や条件の言葉で調べます。自社のお客様の担当者がこうした言葉で検索しそうか、営業の人に聞いてみてください。
同じ質問を何度も受けているか
営業や電話で何度も受ける質問は、そのまま記事の候補になります。何度も聞かれるということは、ほかのお客様も同じことで困っていて、検索している可能性が高いからです。
「その材料で、その精度は出せるのか」「なぜ見積もりがこの金額になるのか」。こうした質問に毎回口頭で答えているなら、記事にしておけば、読んだ人は答えを知ったうえで相談してきます。
答えを社内の人が持っているか
記事の中身は外からは出てきません。ネットの情報をまとめれば記事の形にはなりますが、それは検索上位の記事と同じ内容です。
Googleは、経験や専門性のある、人のために書かれた情報を評価すると説明しています(Google 検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」)。何十年も同じ加工をしてきた会社には、その経験がそのままあります。中小企業が大手と同じ土俵で戦えるのは、ここです。
BtoB・製造業が向いている理由
BtoBの製造業は、オウンドメディアに向いていることが多いと私たちは考えています。
1つは、1件の相談の重さです。一般消費者向けなら、たくさんの人に読まれて少しずつ買ってもらう必要があります。BtoBでは、月に数人しか検索しない言葉でも、その1人が継続的な取引につながることがあります。検索する人の数が少ないことは、BtoBでは弱みになりにくいのです。
もう1つは、説明の手間です。加工の方法や材料の選び方は、製品カタログだけでは伝わりません。記事なら、図や表を使って、読む人のペースで理解してもらえます。営業が毎回説明していた内容を、記事が先に説明してくれることになります。
製造業での具体的な作り方は技術相談サイトの型で扱っています。
向かない会社
次のどれかに当てはまるなら、オウンドメディアは後回しにしたほうがよいかもしれません。
新しいお客様を増やす予定がない
取引先が数社に決まっていて、今の仕事で手一杯という会社です。オウンドメディアは新しい出会いを作る仕組みなので、出会いが要らないなら費用に見合いません。採用に困っているなら話は別で、仕事の中身を伝える記事は採用にも使えます。
半年以上待てない
来月の売上が必要な状況なら、オウンドメディアでは間に合いません。私たちの新しいサイトも、2026年8月22日の時点では検索からのクリックが付いていませんでした(立ち上げ間もない4サイトの実測)。
Googleも、変更が検索結果に反映されるまでには数時間から数か月かかると説明しています(Google 検索セントラル「SEO スターター ガイド」)。すぐに問い合わせが必要なら広告のように即効性のある手を先に使い、オウンドメディアは並行して育てる位置づけにしてください。
答えを出せる人がいない、時間がない
社長も技術者も、月に1時間も時間を取れないという状況です。文章にする作業は外に頼めますが、答えそのものは社内からしか出てきません。この状態で始めると、ネットの寄せ集めのような記事が増えていきます。
価格だけで選ばれる商品を扱っている
型番が決まっていて、どこで買っても同じ商品を扱っている場合です。お客様が調べるのは値段と在庫だけなので、記事で伝えられることが少なくなります。ただ、使い方や選び方で迷う商品なら、その迷いに答える記事には意味があります。
向いているのに、うまくいかない会社の共通点
向いている条件がそろっていても、つまずくことがあります。私たち自身の失敗から、よくあるものを挙げます。
1つ目は、作れば検索に出ると思ってしまうことです。私たちは暦のメディアを1,000ページ以上作りましたが、公開2週間の時点で検索からの流入は0でした。作ることと、検索に出ることは別です。
2つ目は、測らないことです。同じ暦のメディアで、Search Consoleで実際に来ている検索語を取り出して照合したところ、検索されている語がページの本文に書かれていないことがよくありました。こうした直しを始めてから、検索結果に表示されたページの割合は29.8%から最大59.6%まで上がりました(Search Console、2026年8月21日と9月5日、それぞれ直近28日間)。その後9月末には46.4%に下がっており、測り続けないと、上がった理由も下がった理由も分かりません。
3つ目は、自社の言いたいことを書いてしまうことです。「当社の強み」「新しい設備を入れました」は、社名を知っている人向けの話です。悩みで検索する人には届きません。この違いはオウンドメディアとホームページの違いで詳しく書いています。
今のホームページで、検索されている言葉を先に見る
すでにホームページがあるなら、判断の材料はもう手元にあるかもしれません。Google Search Consoleに登録していれば、どんな言葉で検索結果に表示されたかが一覧で見られます。
社名や製品名以外の言葉、たとえば加工の方法や材料の名前で表示されていれば、お客様がその言葉で調べている証拠です。ホームページに記事がないのに表示されているなら、そこに答えるページを作れば読まれる見込みがあります。
見るときの注意が1つあります。Search Consoleは、同じページをhttpとhttps、wwwありとなしで別々のURLとして返すことがあります。私たちはこれに気づかず、トップページの表示ページ率を400%と数えてしまいました。4通りのURLが返ってくるのは、httpsへの転送設定が漏れている信号でもありました(3サイトで見つかりました)。数字がおかしいと感じたら、まずURLの形をそろえて数え直してください。
迷ったら、質問を20個書き出してみる
向いているかどうか判断がつかないときは、お客様からよく受ける質問を20個書き出してみてください。すらすら20個出てくるなら、書く材料はあります。10個も出てこないなら、まだ始める時期ではないか、読む人の想定がずれているのかもしれません。
書き出した質問の中に、ほかの会社のサイトにはまだ答えが載っていないものがあれば、それが最初の1本です。費用の見当はオウンドメディアの費用は何で決まるかで作業ごとに分解しています。始める順番はオウンドメディアのカテゴリにまとめました。
ナギサコーポレーションでは、この「質問の書き出し」からお手伝いできます。向いていないと判断した場合は、そうお伝えします。