ノーコードとは、プログラムを書かずに、画面の部品を並べたり条件を選んだりして、業務のアプリや自動の流れを作る方法です。ローコードは、基本は同じ作り方で、足りないところだけ短いコードを書き足せる方法を指します。
IPA(情報処理推進機構)のDX白書2023は、第5部でこの2つを取り上げています。プログラミング言語なしで実装できるものをノーコードツール、簡単なプログラミングで実装できるものをローコードツールと書き分けています。
小さな会社でノーコードを使う場面は、紙やExcelで回している社内の仕事を、入力の画面と一覧と通知に置き換えるときです。
ノーコードで作れるもの
| 作るもの |
製造業での例 |
| 入力の画面 |
有給の申請、不良の報告、設備の点検記録 |
| 一覧と検索 |
案件の進み具合、金型の保管場所、図面の版 |
| 自動の流れ |
申請が承認されたら担当者にメールを送る |
| 簡単なサイト |
会社の紹介、採用の案内 |
たとえば、工場の点検記録を紙の表で回している会社なら、スマホで入力する画面と、点検漏れの設備が一目で分かる一覧を、ノーコードで作れます。入力したデータは表として貯まるので、月ごとの集計も手で写さずに済みます。
入力の画面だけで足りるなら、Googleフォームで始められます。使い方はGoogleフォームの記事にまとめました。一覧と検索まで要るなら、kintoneのような業務アプリの道具があります。できることと料金はkintoneとはで扱っています。会社のサイトを作る道具はCMSの選び方で比べています。
国の調達の資料にも、ノーコード・ローコードの例が出てきます。環境省の調達の質問回答(PDF)は、Power Platform、Salesforce Platform、kintone、e-Govの様式作成支援ツールなどを、ノーコード・ローコードのサービスやツールの例として挙げています。単なるHTMLやCSVファイルの作成は、それに含めていません。
ローコード・プログラムとの違い
ノーコード、ローコード、プログラムを書く方法は、どこまで自分で書くかで分かれます。
| 作り方 |
書くもの |
向く仕組み |
| ノーコード |
書かない。部品と設定だけ |
部署で使う小さな仕組み |
| ローコード |
足りない部分だけ書く |
少し複雑な条件や、外とのつなぎ |
| プログラム |
全部書く |
大きな基幹の仕組み |
ExcelのマクロやGASは、ノーコードではありません。どちらもプログラムを書いて動かすものです。ただ、すでにExcelやGoogleスプレッドシートにデータがあるなら、新しい道具を入れるより早いこともあります。ExcelマクロとはとGASとはに、それぞれ向く作業を書きました。
最近は、作りたいものを文章で伝えると、AIが画面と動きを組み立てる道具も出ています。Googleはノーコードの解説で、ドラッグ&ドロップのほかに、自然言語の指示でアプリを作る方法もノーコードに含めて説明しています。
同じページは、AIに文章で頼んでコードを書かせる方法(バイブコーディング、AIによるコード生成)を、ノーコード・ローコードとは別の列に置いて比べています。AIが書いたコードで動くものは、見た目はノーコードで作ったようでも、中身はプログラムです。直すときにコードを読める人がいるか、AIにもう一度頼んで直せる形で残っているかを、ノーコードの道具とは分けて考えます。
Excelの表から移るときの準備
ノーコードの道具に移る仕事の多くは、いまExcelの表で回っています。道具を選ぶ前に、その表を次の形に整えておくと、取り込みで手間取りません。
- 1行に1件、1列に1つの項目だけを入れる(1つのセルに品番と数量を一緒に書かない)
- セルの結合をやめる。見出しは1行目の1行だけにする
- 日付、数量、担当者名の書き方をそろえる(全角と半角、略称の混在をなくす)
- 色だけで状態を表している列(赤は未対応など)は、状態の列を足して文字で書く
金型の保管場所を管理する表を例にします。型番、保管している棚、最後に使った日、担当者の4つの列にそろっていれば、そのまま一覧と検索の画面になります。色分けと備考欄に情報が散らばっている表だと、道具に入れる前に人が読み解いて書き直すことになります。
この整理は、道具を何にするかに関係なく役に立ちます。結局Excelのまま続けることにしても、集計やマクロが組みやすくなります。
向かないもの
DX白書2023は、ノーコード・ローコードの長所として、エンジニアでなくても作れることを挙げています。業務をよく知っている現場の部門が、自分たちに合う仕組みを作れる、という点です。
同じ節で、向かない場面も書いています。まとめると次の3つです。
- ほかの多くの機能とつながる大きな業務の仕組みには向かない場合がある
- 作りたいものに必要な機能が道具に無ければ、使う価値は低い
- ライセンスの費用が高いものや、ほかのサービスへ移しにくいものがある
小さな会社で気をつけたいのは3つ目です。使う人が増えるたびに月の費用が増える道具では、最初は安くても、全社で使い始めると費用が膨らみます。道具をやめたくなったときに、データと画面の作りを丸ごと別の道具へ移す方法が無いこともあります。
入れる前に確かめること
料金が1人あたりか、会社あたりか。最低の契約人数があるか。データを表の形(CSVなど)で書き出せるか。この3つは、無料の試用期間のうちに、公式の料金表とヘルプで確かめます。
社内で作る前に決めること
DX白書2023は、現場の部門が仕組みを作るときの注意として、情報システムの部門が把握していない仕組みが増えないようにすることを挙げています。ガイドラインを示し、道具の評価やセキュリティの面で支えることが望ましい、とも書いています。
情報システムの部門が無い小さな会社なら、この役割を誰か1人に決めておきます。決めるのは次のことです。
- どの道具を会社として使うか(部署ごとに別の道具を契約しない)
- 作った仕組みの一覧を、誰がどこに残すか
- 作った人が異動や退職をしたとき、誰が引き継ぐか
- 取引先の情報や図面を入れてよいか
同じ節には、仕組みの運用は、現場の部門に任せるより情報システムの部門が担うほうが、人員や費用の面で利点が多いとも書かれています。小さな会社に置きかえると、画面を作る人と、権限の管理や書き出しの保管を受け持つ人を分ける、ということです。
ノーコードは作るのが速いぶん、気づくと誰も全体を知らない仕組みが増えます。作った仕組みごとに、何のための画面か、どのデータを使っているか、困ったら誰に聞くかを、短い手順書にして残します。手順書の作り方はマニュアル作成のコツにまとめています。
データの持ち出し方と、やめるときの移し方
DX白書2023が書いているのは、ツール間の互換性がなく、ほかのサービスへの移行のハードルが高い製品がある、というところまでです。どう備えるかは書かれていないので、ここからは、入れる前にやっておく手順です。
- 試用のうちに、入れたデータをCSVなどで書き出し、Excelで開いて中身を確かめる
- 添付ファイル、コメント、変更の履歴が、その書き出しに含まれるかを見る
- 画面の作りと自動の流れは、別の道具へそのまま移せない前提で、手順書に残す
- 月に1回など日を決めて書き出し、会社の共有の場所に保管する
表の文字は書き出せても、点検の写真や図面の添付は別に取り出す必要がある、ということがあります。やめるときに困らないかは、入れる前の試用で一度やってみると分かります。
どこから始めるか
DX白書2023は、使う人の数や業務への影響を考え、比較的小さい仕組みから始めることを勧めています。
同じ白書の導入の進め方の節(257ページ)は、新しい開発の方法を一度にすべてのシステムに入れるのではなく、今の業務への影響が少ない一部から始めることを挙げています。手直しの回数が多い仕組みや、小さく立ち上げて育てていく業務の仕組みと相性がよい、とも書いています。小さな組織で始め、業務への効果を測って経営の側に示していく進め方や、外部の会社を使う方法にも触れています。
日本の企業で、ノーコード・ローコードを使っているところはまだ多くありません。同じ白書の調査(図表5-22)では、日本の542社のうち、全社で活用しているのが5.9%、事業部で活用しているのが15.7%でした。米国の386社では、それぞれ20.7%と26.2%です。
始めるなら、1つの部署で、毎週くり返していて、止まっても手作業に戻せる仕事を1つ選びます。点検記録や備品の貸し出しの記録のようなものです。そこで1か月使い、入力する人が続けられるかを見てから、ほかの部署へ広げます。
どの仕事から仕組みにするかの選び方は業務効率化ツールの選び方に、ほかの記事はオウンドメディアのカテゴリにまとめています。
資料・出典の確認日:2026年10月25日。