電子帳簿保存法とは、税の決まりで保存しなければならない帳簿や書類を、紙ではなくデータで保存するときのルールを定めた法律です。正式な名前はとても長いので、一般には電子帳簿保存法、略して電帳法と呼ばれます。
小さな会社が必ず対応しなければならないのは、データで受け取ったり送ったりした請求書・注文書・領収書などの保存です。メールで届いた請求書のPDFは、印刷して綴じれば済む、という扱いはできません。データのまま、決まった方法で保存します。
この記事は、国税庁の一問一答(令和8年7月版)を読んで、社内の事務の決め方に必要なところをまとめたものです。税の判断は、会社の状況で変わります。自社に当てはまるかは、顧問の税理士か所轄の税務署に確かめてください。
電子帳簿保存法の3つの区分
国税庁の一問一答は、制度を大きく3つに分けて説明しています。
| 区分 |
中身 |
対応 |
| 電子帳簿・電子書類 |
会計ソフトなどで作った帳簿や書類を、データのまま保存する |
要件を満たせば選べる |
| スキャナ保存 |
紙で受け取った請求書などを、スキャンしたデータで保存する |
要件を満たせば選べる |
| 電子取引 |
データで受け取った・送った取引の情報を、データで保存する |
必ず対応する |
上の2つは、紙で保存してもかまいません。3つめの電子取引だけは、紙に出して保存する方法が無くなっています。国税庁の一問一答は、令和3年度の税制改正で、データを紙に出した書面などで保存する措置が廃止されたと説明しています。
どんな取引が電子取引になる?
国税庁の電子取引の一問一答では、電子取引とは、取引の情報をデータでやりとりする取引のことです。取引の情報とは、注文書、契約書、送り状、領収書、見積書などに通常書かれている内容を指します。
一問一答が例に挙げているものを、製造業の事務に当てはめると次のようになります。
- 取引先から、請求書のPDFがメールに添付されて届く
- 仕入先のサイトから、請求書や領収書をダウンロードする
- 請求書を受け渡すクラウドサービスで、請求書を受け取る
- 取引先とのEDI(受発注のデータのやりとり)で注文を受ける
- ペーパーレス化されたFAX機能を持つ複合機で、注文書をデータとして受け取る
- インターネットバンキングで振り込む(振込日・金額・振込先のデータ)
受け取る側だけでなく、自社から送る請求書や見積書も対象です。自社で作った請求書をPDFにしてメールで送ったら、その控えのデータも保存します。
FAXの扱いは、ペーパーレス化を進める会社がつまずきやすいところです。受け取ったFAXを紙に出さずデータで回すように設定を変えたら、その注文書のデータは電子取引として保存することになります。紙の仕事を減らす順番はペーパーレス化の進め方で説明しています。
メールは全部保存するの?
全部ではありません。一問一答の問6は、取引の情報が含まれていないメールは保存しなくてよいとしています。請求書がPDFで添付されているなら、そのPDFだけを保存すれば足ります。メールの本文に金額や品番などの取引の情報が書かれているときは、そのメール自体を保存します。
同じ請求書が紙とPDFで届いたら?
一問一答の問16は、内容が同じで、紙を正本として扱うと社内で決めているなら、紙の保存だけで足りるとしています。ただし、PDFやメールの本文に紙には無い情報が含まれているなら、両方を保存します。
データで保存するときの2つの要件
電子取引のデータは、ただパソコンに置いておけばよいわけではありません。改ざんを防ぐことと、あとで見つけ出せることの2つが求められます。
改ざんを防ぐ措置
一問一答の問18では、次の4つのうち、どれか1つを行うことになっています。
- タイムスタンプが付いたデータを受け取る
- 受け取ったあと、速やかにタイムスタンプを付ける
- 訂正や削除の記録が残る、または訂正や削除ができないシステムで受け取り・保存する
- 訂正や削除を防ぐための事務処理規程を決めて、そのとおりに運用する
小さな会社が自前で始めやすいのは4つめです。国税庁は規程のひな形を公開していて、電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程の法人の例と、索引簿の作成例が、WordとExcelで置かれています。ひな形をそのまま置くのではなく、誰が保存し、誰が確かめるかを自社の名前で書き入れて使います。
日付・金額・取引先で探せる状態
一問一答の問48は、検索の要件を3つ挙げています。
- 取引の日付、取引金額、取引先で検索できる
- 日付と金額は、範囲を指定して検索できる
- 2つ以上の項目を組み合わせて検索できる
税務職員からのデータのダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、2つめと3つめは不要になります。
専用のソフトが無い会社向けに、一問一答の問19と問50は具体的な方法を示しています。1つは、ファイル名に日付・取引先・金額を決まった順に入れる方法です。一問一答の例では、2021年1月31日に受け取った110,000円の請求書に、日付の20210131、取引先の名前、金額の110000を、この順にアンダーバーでつないだ名前を付けています。日付は和暦か西暦のどちらかにそろえます。もう1つは、ファイルに通し番号を付け、表計算ソフトの一覧表に日付・金額・取引先を入力する方法です。
ファイル名のルールは、決めるより守るほうが難しくなります。受け取った人がその場で名前を付け直すのか、経理が月末にまとめて付けるのかまで、担当を決めておきます。
検索の要件が要らない場合
一問一答の問48と問51・問52によると、次のどちらかに当てはまり、かつ税務職員からのダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、検索の要件はすべて不要になります。
- 基準期間の売上高が5,000万円以下(法人は、取引をした事業年度の前々事業年度の売上高で判断)
- データを印刷した書面を、日付と取引先ごとに整理して、提示や提出ができるようにしている
売上高の基準は、令和6年1月1日以後の取引についての数字です。それより前の取引は1,000万円以下でした。売上高には、消費税法の課税売上高と違って非課税の売上も含まれると、問51は注意しています。
検索の要件が要らなくても、データの保存は要る
不要になるのは、探す仕組みの要件だけです。データそのものを保存すること、改ざんを防ぐ措置をとることは、売上高が小さい会社でも変わりません。
準備が間に合わないとき:猶予措置
令和6年1月1日以後の電子取引には、猶予措置があります。一問一答の問93によると、保存のためのシステムや社内の手順が間に合わないなど、要件どおりに保存できない相当の理由があると税務署長が認め、税務調査のときにデータと、それを印刷した書面を提示・提出できるようにしていれば、保存の要件を満たしていなくても保存できる扱いです。税務署への事前の申請は要りません。
ただし、印刷した書面だけを保存してデータを捨てる対応は認められません。問89と問93は、データそのものも保存しておく必要がある点をはっきり書いています。また、仕組みが整っていて要件どおりに保存できるのに、資金繰りや人手不足などの事情も無く保存していない場合は、猶予措置を受けられないとしています。
保存する期間
保存の期間は、電子帳簿保存法ではなく、それぞれの税法で決まっています。一問一答の問17の表では、法人の注文書・契約書・領収書などは7年です。青色申告で欠損金が出た事業年度などは10年になります。
データは、保存期間のあいだ開ける状態でなければなりません。担当者のパソコンの中だけに置くと、退職や故障で取り出せなくなります。会社の共有の置き場所を決め、一問一答が望ましいとしているバックアップも取っておきます。
社内で最初に決めること
電子帳簿保存法への対応は、ソフトを入れることより、社内の事務の流れを決めることが中心です。
- データで届く請求書・注文書・領収書が、誰のメールやどのサイトに届いているかを洗い出す
- 保存の置き場所を1つに決める(個人のパソコンやメールの中に残さない)
- ファイル名か一覧表のどちらで探せるようにするかを決める
- 訂正や削除を防ぐ事務処理規程を、国税庁のひな形をもとに作る
- 自社の売上高で検索の要件が要るかを、税理士に確かめる
紙で届く書類をデータにするOCRとの関係はOCRの入れ方で、請求書の作成や仕分けを含めた道具の選び方は業務効率化ツールの選び方で説明しています。生成AIで経理の書類を扱うときの注意は生成AIの業務活用にまとめました。業務効率化を含めた私たちの記事の全体はオウンドメディアのカテゴリから読めます。
確認日:2026年10月25日(国税庁の電子帳簿保存法一問一答〈令和8年7月版〉、参考資料のひな形のページ)。