BtoBのペルソナとは、自社のサイトを読んでほしい相手を、会社の中での役割、困っていること、使う言葉、社内で通す相手で描いた1枚の人物像のことです。年齢や趣味ではなく、仕事の上で何を決められずにいるかを書きます。
作る材料は、実際の問い合わせと営業の記録です。社内の会議で想像して作ると、誰も実際には会ったことのない人物に向けて記事を書くことになります。
ペルソナを作ったあと、その人が相談に至るまでの段階とページを並べる作業はカスタマージャーニーで扱っています。ここでは、その手前の1枚の作り方に絞ります。
なぜ、書く前に相手を決める?
Googleは有用なコンテンツの説明で、ユーザー第一のコンテンツかを確かめる問いの1つ目に、次を挙げています。
特定のユーザー層がすでに存在しているか、想定されており、その人たちがビジネスまたはサイトを直接訪問した際に、コンテンツを有用だと感じてくれると思いますか。
同じページは、既存のユーザー層のためではなく、話題になっているという理由で書いていないかも、問いとして挙げています。誰に向けて書くかが決まっていないと、この問いに答えられません。
製造業のサイトでは、同じ「樹脂部品の試作」でも、設計の担当者と購買の担当者で知りたいことが違います。設計の担当者は形と材料で頼めるかを、購買の担当者は数量と納期と支払いの条件を見ます。1本の記事で両方に答えようとすると、どちらにも足りない記事になります。
1枚に書く項目
1枚に書くのは、次の8項目です。
| 項目 |
書くこと |
例 |
| 役割 |
社内で担当している仕事 |
装置メーカーの機械設計 |
| きっかけ |
調べ始めた出来事 |
試作品で寸法が合わない |
| 困りごと |
決められずにいること |
外に頼むか、社内で直すか |
| 使う言葉 |
検索や問い合わせで使った言い方 |
「樹脂 反り 対策」 |
| 判断の材料 |
決めるために要る情報 |
材料ごとの反りやすさ |
| 社内で通す相手 |
承認や確認をする人 |
上司・購買・品質保証 |
| 止まる理由 |
検討が止まったときの理由 |
図面を外に出せない |
| 根拠 |
どの記録から書いたか |
問い合わせ記録・商談メモ |
例の列は説明のための架空の設定です。実在のお客様の記録ではありません。
いちばん下の「根拠」の欄を必ず埋めます。記録から書いた項目と、推測で書いた項目を分けるためです。推測で書いた欄には「未確認」と書き、次の商談や聞き取りで確かめます。
使う言葉は、相手の言い方のまま書く
社内で「射出成形の外観不良」と呼んでいることを、お客様は「ヒケ」「ウェルドライン」「表面のへこみ」と呼ぶかもしれません。問い合わせのメールに書かれていた言い方を、そのまま写します。
GoogleのSEOスターターガイドも、トピックをよく知っている人とよく知らない人では、検索に使う語が違うことがあると書いています。どちらの人がペルソナなのかで、記事の題に使う言葉が変わります。
記録から、どう埋める?
問い合わせを10件ほど集め、1件ずつ次のことを抜き出します。名前や会社名はペルソナに写しません。
- 相手の役割(メールの署名や会話から分かる範囲で)
- 最初の問い合わせに書かれていた言葉
- こちらが返事のために聞き返したこと
- 最終的にどうなったか(依頼、保留、他社)
問い合わせの記録を一覧にしていない会社は、メールの受信箱を「見積もり」「図面」「相談」などの語で検索します。見つかった分から始め、足りなければ営業の担当者の記憶で補います。
社内で承認する人は、問い合わせのメールには出てきません。CCに入っていた人の役職や、商談に同席した人を営業に聞いて、「社内で通す相手」の欄を埋めます。
3がもっとも役に立つ欄です。こちらが聞き返したことは、相手が最初に書けなかったこと、つまりページに書いておけば省ける質問です。図面の形式や数量を毎回聞き返しているなら、それは相談の案内ページに書くべき内容です。
英国政府のサービス設計の手引き(利用者の必要の章)は、利用者の必要を書くときの条件として、思い込みではなく調査の証拠に基づくことを挙げています。また、解決の手段ではなく利用者の問題に焦点を当てるよう書いています。行政サービスの手引きですが、BtoBのペルソナにもそのまま使える考え方です。
同じ手引きは、利用者の必要を「〜として、〜したい。〜するために」の形で書く例を示しています。ペルソナの1枚の下に、この形で1文を足しておくと、記事の目的がぶれません。
装置メーカーの設計担当として、試作品の反りの原因を知りたい。社内で直せるか、外に頼むかを上司に説明するため。
もう1枚の例:購買の担当者
同じ樹脂部品の試作でも、購買の担当者の1枚は、設計の担当者とまったく違う中身になります。ここも説明のための架空の設定です。
役割は、装置メーカーの購買で、外注先の選定と発注を担当しています。きっかけは、設計から「この部品を外で作れる会社を3社探して」と頼まれたことです。困りごとは、どの会社が小ロットで受けてくれるか、見積もりまでに何日かかるかが分からないことです。
使う言葉は、技術の言葉より「樹脂 部品 試作 小ロット 見積もり」のような、発注の条件を表す語になります。判断の材料は、受ける数量、見積もりの日数、支払いの条件、取引の始め方です。社内で通す相手は、上司と経理です。
この1枚から書くページは、技術記事ではなく、相談の案内ページや、取引の流れを説明するページです。設計の担当者に向けた記事と、同じ製品の話でも、冒頭で答えることがまったく違います。
よくある作り方の失敗
ペルソナの1枚は、作り方を誤ると、書く記事をかえって迷わせます。次の3つは避けます。
- 社長が来てほしいと思う理想のお客様を描く。実際に問い合わせてくる人と違えば、その記事は読まれません
- 1人に全部の役割を持たせる。設計も購買も品質も見る人にすると、どの答えも浅くなります
- 作ったあと見返さない。記事の依頼書に添えなければ、作った意味がありません
営業の担当者に聞き取るときは、「最近、最初の問い合わせで何と書いてきましたか」「返事の前に何を聞き返しましたか」「決まらなかった案件は、何で止まりましたか」の3つを聞きます。答えは、そのまま1枚の欄に入ります。
聞き取りの進め方は聞き取りの手順にもまとめています。
1枚から、どのページを書く?
ペルソナの「困りごと」が、まだ原因を調べている段階なら記事を、頼む先を比べている段階ならLPや相談の案内ページを書きます。
| ペルソナの状態 |
書くページ |
冒頭で答えること |
| 原因を調べている |
技術記事 |
現象の原因と確かめ方 |
| 頼めるかを確かめている |
加工・製品のページ |
材料・寸法・数量の範囲 |
| 頼む先を比べている |
LP・相談の案内 |
受ける条件と返事までの流れ |
| 社内で通そうとしている |
資料・会社概要 |
承認する人が見る項目 |
1枚のペルソナから、段階の違うページが何本か生まれます。同じ人に向けたページなので、記事の終わりから加工のページへ、加工のページから相談の案内へと、リンクでつなぎます。
LPの構成はLPの作り方にあります。検索する人の目的の読み方は検索意図の読み取り方で扱っています。BtoBの検索のされ方全体はBtoBのSEOで扱っています。
読む人は、思っていた人と違うことがある
ペルソナは、公開したあとの数字で確かめ直します。Search Consoleで実際に来ている検索語を見ると、想定と違う人が読んでいることが分かります。
私たちの実測(2026年10月)
自社運営の製品比較サイトでは、クリックが来ていたのは「〇〇 比較」のような比べる語より、型番そのものや社名の検索が先でした(2026年10月23日に Search Console の語を見て確認)。
出典:Google Search Console
比較のページは、比べる語で検索する人に向けた作りです。それでも先にクリックが来たのは、型番や社名で検索した人でした。型番を知っている人は、製品を選ぶ段階より先に進んでいます。ページの冒頭で答えるべきことも変わります。
3か月に1回、来ている検索語と問い合わせの記録を見直し、ペルソナの1枚を書き換えます。書き換えた日と、何を見て書き換えたかを欄外に残します。営業との分担の決め方はBtoBマーケティングにあります。
記事の企画全体はオウンドメディアの進め方に沿って組み立てます。ペルソナの1枚は、記事の依頼書の最初に必ず添えてください。外の制作会社に頼むときも、誰に向けて書くかが伝わります。
仕様・出典の確認日:2026年10月25日。