サプライチェーン攻撃とは、取引先や委託先を経由して本来の標的に届く攻撃です。IPAの情報セキュリティ10大脅威 2026では「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」が組織編の2位に挙げられており、8年連続の選出です。
何から手を付けるか
順番は、自社の基本を固める、説明できる形にする、委託先を見る、です。
- 情報セキュリティ6か条を実施する
- SECURITY ACTIONを宣言する
- 取引先と自社をつなぐ接続やデータのやり取りを書き出す
- SCS評価制度の要求事項で、自社の状態を点検する
- 自社が仕事を任せている委託先の状況を確かめる
自社の事故は、自社だけで終わらない
IPAの2024年度の実態調査では、被害を受けた企業(975社)の約7割が、取引先に影響があったと答えました。影響の内容には、サービスの停止や遅延が36.1%、賠償や補償の負担が32.4%、原因調査や復旧の人件費などの負担が23.2%とあります。
不正アクセスを受けた企業(419社)への質問では、取引先やグループ会社などを経由した侵入が19.8%でした。受ける側にも、経由される側にもなりうるということです。
部品メーカーの例で考えます。発注元と受発注の仕組みでつながり、図面を受け取っている会社なら、影響は2方向あります。自社が止まれば納品が遅れ、自社のアカウントが悪用されれば発注元に迷惑がかかります。先に確かめるのは、この接続の管理です。
SCS評価制度の概要
SCS評価制度は、サプライチェーンを構成する企業の対策の水準を★で示す制度です。IPAの案内によると、経済産業省と内閣官房国家サイバー統括室の所管のもと、IPAが運営します。
| 区分 |
★3 |
★4 |
| 位置づけ |
全ての企業が最低限実装すべき |
標準的に目指すべき |
| 要求事項 |
26件 |
43件 |
| 評価 |
専門家確認付き自己評価 |
第三者評価 |
| 有効期間 |
1年 |
3年 |
★3の取得は★4の前提ではなく、★5は検討中です。予定としては、2026年12月に評価機関などが公表され、2027年3月に受付が始まり、2027年4月以降に取得企業が公表されます。IPAは2026年10月28日に評価用のガイドと解説書を公開しました。
中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版はこの制度の基本的な考え方に沿っています。まずガイドラインで土台を作り、そのあと要求事項で詰めるとつながります。
今すぐ取得が要るとは限らない
制度の受付はこれからで、どの取引先がいつ求めるのかは会社によって違います。発注元に方針を聞くのが確実です。慌てて取得支援の契約を結ぶ前に、要求事項での自己点検から始められます。
調査票が届いたら
取引先の調査票は、答え方で印象が変わります。3つの決まりで答えます。
- 事実だけを書く。「予定」と「実施済み」を混ぜない
- 「いいえ」の項目には、代わりにやっていることと改善の時期を添える
- 回答の控えを残し、次回の調査で同じ答えを使い回せるようにする
要請は悪いことばかりではありません。IPAの調査では、要請を受けた企業(511社)の42.1%が、要請された対策が取引につながった大きな要因だと答えています。
調査票が増えてきたら、チェックシートの管理ツールで回答を一元化する方法があります。自社の外から見える状況を点数で示すセキュリティレーティングという製品もあります。
要請に応えるときの悩み
同じ調査報告書によると、取引先から要請を受けた経験がある企業は1割強で、内容は「秘密保持のための措置」が79.6%でした。対策を進めるうえでの課題には、費用の用意と負担の検討が51.3%、発注元との契約内容の明確化が47.0%、専門人材の確保が32.9%と挙がっています。
無理な要請をそのまま受ける必要はありません。何をいつまでに求められているのかを確かめ、費用がかかるものは負担の分け方を相談します。自社が協力会社に仕事を出す立場でも同じです。求める内容を具体的に伝えると、相手も答えやすくなります。
ISMSやPマークは要るのか
ISMSは情報セキュリティの管理の仕組みに関する認証で、プライバシーマークは個人情報の扱いに関する制度です。取引先が認証を条件にしているなら、取得を考えます。IPAの調査報告書では、要請を受けた企業のうちISMS取得済みの企業の73.9%が、対策が取引につながったと答えました(未取得は30.3%)。
ただ、取得には文書の整備や審査の手間がかかります。求められていない段階なら、6か条やSCSの要求事項による点検で足りることもあります。準備を手伝うISMS運用の道具も、要否を決めてから比べます。
弱点の確かめ方は脆弱性診断・セキュリティ診断、事故が起きたときの連絡体制は監視・運用・社内体制、全体の順番はセキュリティ対策の全体像にまとめています。