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セキュリティ / CATEGORY

工場・製造業のセキュリティ:生産を止めずに守るOT対策の進め方と順番

公開 2026.11.06文・ナギサコーポレーション

この記事の答え

  • 工場は止めないことが第一。更新を当てにくいので、分けることと見ることで守る
  • 最初の仕事は、設備とネットワークのつながりと保守用の接続を図にすること
  • 事務所からの被害が工場へ広がる形も、工場を止める判断も平時に決めておく

工場・製造業のセキュリティの解説記事(4本)

セキュリティ / 工場・製造業のセキュリティOTセキュリティとは?工場の生産設備を守る考え方をやさしく解説するOTセキュリティとは、工場の生産設備や制御システムを、停止や誤動作から守る対策です。情報を守るITと何が違い、工場では何を優先するのかを、経産省とIPAの資料をもとに整理します。解説を読むセキュリティ / 工場・製造業のセキュリティIoTセキュリティとは?工場や社内に増えた機器の危ない所と点検方法IoTセキュリティとは、ネットワークにつながるカメラや複合機、センサーなどを乗っ取りや情報漏えいから守る対策です。見落としやすい機器の洗い出し方と、担当者が確かめる5つ⁠の点検項目を公的資料をもとに整理します。解説を読むセキュリティ / 工場・製造業のセキュリティ制御システムのセキュリティとは?PLCとSCADAを止めずに守る方法制御システムのセキュリティとは、PLCやSCADAを停止や誤動作から守る対策です。すぐに更新できない設備は、計画停止の日に更新を回し、その間を通信の分離と監視で補います。考え方と注意点を公的資料をもとに整理します。解説を読むセキュリティ / 工場・製造業のセキュリティ製造業のセキュリティ対策は何から?事務所と工場を分けて考える手順製造業のセキュリティ対策は、事務所のITと工場のOTを分けて考え、外との入口と復旧の備えから予算をつけます。社長が決める順番を、警察庁の統計や経産省のガイドライン、SCS評価制度の予定とあわせて整理します。解説を読む
目次

OTセキュリティとは、工場の生産設備とそれを動かすネットワークを、止めずに守る取り組みです。OTは事務所のIT(情報技術)に対して、PLCやSCADAのように設備を動かす技術を指します。情報を守るのが中心のITと違い、工場では止めないことと安全が第一になります。

何から手を付けるか

順番は、把握する、分ける、入口を絞る、見る、戻せるようにする、です。

  1. 設備とネットワークのつながりを図にする
  2. 保守用の接続、USBメモリの使い方を洗い出す
  3. 事務所と工場のネットワークの境目を確かめる
  4. 不要な接続を止め、必要な接続は担当と時間を絞る
  5. 設備の設定とプログラムのバックアップを取る
  6. 異常時に工場を止める判断と、手順を決める
  7. 必要に応じて通信の監視を足す

なぜ製造業が先に備えるのか

警察庁の令和8年上半期の報告では、ランサムウェアの被害は業種別で製造業が約3割⁠を占め、最も多くなっています。工場の設備そのものが狙われるとは限りません。事務所側で起きた被害が、受注、生産計画、出荷の仕組みを通じて工場を止めることもあります。

IPAは制御システム関連のサイバーインシデント事例⁠を公開しており、2019年⁠のアルミ製造企業へのランサムウェア攻撃や、2018年⁠のサプライチェーンに起因する半導体製造企業の操業停止の事例が読めます。規模の大きい企業の事例ですが、事務所と工場のつながりや、持ち込まれた機器の扱いを考える材料になります。

ITと同じやり方が通じない理由

事務所で当たり前の対策が、工場ではそのまま使えないことがあります。

対策 事務所(IT) 工場(OT)
更新を当てる 比較的かけやすい 検証と停止の調整が要る
製品を入れる 端末に入れやすい 設備の保証に関わることがある
異常時に止める 情報を守るため止めやすい 生産と安全に影響する
機器の寿命 数年で入れ替わる 長期に使われることが多い

だから工場では、弱点を全部なくすことを目指しません。古い設備が残っている前提で、届かないように分ける、入る経路を絞る、おかしな通信に気づく、という守り方を組み合わせます。

設備に触る前に

設備に製品を入れたり設定を変えたりする前に、設備メーカーへ確かめてください。保証や動作に関わることがあります。ネットワークの監視は、設備に触らずに通信を写して見る形もあります。

つながりを図にする

樹脂成形の工場を例にすると、成形機の稼働データを集めるサーバー、事務所の生産管理システム、金型の保守のために設備メーカーがつなぐ回線、作業者がプログラムを持ち運ぶUSBメモリ、といった経路が出てきます。

図にして初めて、「切れているはず」⁠の工場が事務所とつながっていたり、誰も覚えていない保守回線が残っていたりすることに気づきます。これは現場と話さないと書けません。製造部門、設備保全、総務が一緒に歩いて確かめるのが近道です。

OTセキュリティ製品を比べるのは、この図ができてからです。図が無いと、どこに何を置くのか見積もりも取れません。

入口を絞り、通信を見る

保守用の接続は、普段は切っておき、作業のときだけつなぐ運用にできないかを設備メーカーと相談します。USBメモリは使う媒体を決め、持ち込むパソコンのウイルス検査の手順を決めます。

通信の監視は最後で構いません。工場の通信は決まった形が多いので、普段と違う通信を見つけるNDRや、IDSのような方法が使えます。IPAは産業用制御システム向け侵入検知製品等の導入手引書⁠を公開しています。同じページには、制御システムのセキュリティリスク分析ガイド(第2版)⁠や⁠、スマート工場の対策事例の調査報告書も並んでいます。

カメラやセンサーのように増えていく機器にはIoTセキュリティの考え方も関わります。初期パスワードのまま置かれていないかの確認から始められます。

工場の担当者にも伝わる言葉で話す

現場の協力が無いと、図も決まりも続きません。「セキュリティのため」ではなく、「夜中にラインが止まる事故を減らす」「復旧を早くする」のように、現場の仕事に引き寄せて話します。品質や安全の活動と同じ会議で扱えば、新しい負担と受け取られにくくなります。

止める判断を、誰がするのか

事務所で感染が広がったとき、工場のネットワークを切るかどうかは平時に決めておくものです。止めれば納期に響き、止めなければ広がるかもしれません。夜勤の責任者が誰に電話するのか、切ったときに手動で動かせる工程はどこまでか。

工場の設備の異常は、JPCERT/CCの制御システムセキュリティの窓口⁠に報告と相談ができます。

事務所側の基本はサイバー攻撃の基本と最新動向⁠、入口の点検はネットワーク・ゼロトラスト⁠、発注元への説明はサプライチェーンと取引先対応⁠にまとめました。全体の順番はセキュリティ対策の全体像⁠にあります。

よくある質問

OTセキュリティとITセキュリティは何が違いますか?

ITは情報を守ることが中心で、更新も比較的かけやすい領域です。OTは生産を止めないことと安全が中心で、更新は検証や生産計画との調整が必要になります。そのため、更新だけに頼らず、ネットワークを分ける、接続を絞る、通信を見るといった方法を組み合わせます。

工場がインターネットにつながっていなければ安全ですか?

そう言い切ることはできません。保守のための接続、USBメモリ、持ち込まれたノートパソコンなど、インターネット以外の経路があるからです。まずは本当に切れているのかを確かめます。

製造業は事務所と工場のどちらから始めればいいですか?

事務所の基本対策は比較的短い期間で済むので先に進め、並行して工場のネットワークを図にする進め方を私たちは考えています。工場の機器の変更は、生産計画や設備メーカーとの調整が要るからです。

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