統計の数字を記事で使うときは、書く前に3つを確かめます。平均値か中央値か、何世帯・何人から出した数字か、いつの数字か、です。この3つが分からないまま書くと、数字そのものは正しくても、読む人に違う意味で伝わります。
出典の書き方は出典の書き方に、本文の数字を出典と突き合わせる方法は数字の照合に書きました。ここでは、その手前の、数字の読み方を扱います。例は厚生労働省と総務省統計局の公式の数字だけを使います。
平均値と中央値は、どう違う?
平均値は、全部の値を足して、数で割ったものです。中央値は、値を低い順に並べたときに、ちょうど真ん中に来る値です。
厚生労働省の国民生活基礎調査は、用語の説明で中央値を次のように定めています。
「中央値」 とは、所得を低いものから高いものへと順に並べて2等分する境界値をいう。
所得のように、一部にとても大きな値がある分布では、平均値はその大きな値に引っ張られて高く出ます。2025年調査の所得の概況では、数字は次のとおりでした。
| 項目 |
数字 |
| 1世帯当たり平均所得金額 |
575万2千円 |
| 中央値 |
451万円 |
| 平均以下の世帯の割合 |
61.5% |
出典:厚生労働省 2025年国民生活基礎調査の概況、各種世帯の所得等の状況(2026年10月26日確認)
平均以下の世帯が6割を超えています。平均の575万円を「ふつうの世帯の所得」として書くと、読む人の6割にとって実感より高い数字になります。
総務省統計局も、家計調査の解説で同じことを書いています。富士山のように左右に同じように広がった分布なら、平均値が実感に合う。左から右肩下がりになる貯蓄のような分布では、中央値や分布のグラフを確かめる必要がある、という説明です。
両方出ているなら、両方を書く
統計が平均値と中央値の両方を出しているなら、記事にも両方を書きます。片方だけを選ぶと、書き手が都合のよい数字を選んだように見えます。中央値が出ていない統計なら、平均値であることを数字の横に書きます。
自分で中央値を計算できるのは、元の値が1件ずつそろっているときだけです。統計表の平均値から、中央値は出せません。
母数は、何を書く?
母数は、その数字を出すもとになった人数や世帯数です。同じ「61.5%」でも、20人に聞いた結果と、1万人に聞いた結果では、重みが違います。
国民生活基礎調査の調査の概要には、所得を調べた世帯の数が3段に分けて書かれています。
| 段階 |
世帯数 |
| 調べる対象にした世帯 |
27,901 |
| 回答が回収できた世帯 |
17,500 |
| 集計に使った世帯 |
16,921 |
全国の世帯を全部調べたわけではありません。地区を選んで、その中の世帯を調べる標本調査です。575万2千円は、約1万7千世帯の回答から全国の世帯を推計した数字です。記事に母数を書くなら、集計に使った数を書き、推計であることを添えます。
同じ調査でも、年によって母数が変わる
国民生活基礎調査は3年ごとに大きな調査をし、間の年は小さく調べます。2024年調査は中間の年で、所得を集計した世帯は4,901でした(2024年の調査の概要)。
年ごとの推移は、厚生労働省が同じ表にまとめて出しています。並べること自体は問題ありません。ただ、母数の小さい年の数字は振れやすいので、1年だけの上下で「増えた」「減った」と言い切らないようにします。
私たちの実測で、母数を添えた例
立ち上げ間もない4サイトで、ページの種類ごとに検索に出た割合を比べたとき、416ページのうち、種類を分けられる239ページだけを数えました。記事では「3種類に当たるページで比べると」と範囲を必ず添えています。数字は4サイトの実測に書きました。メーカー図鑑では、28日のあいだにページの数が増えていたので、表示されたページ数をページ数で割った率は出していません。分母が決まらない数字は、割り算しないことにしています。
出どころ:Search Console(2026-08-22、2026-09-24〜10-21)
時点は、2つに分けて書く
統計の数字には、調べた日と、数字が指す期間の2つの時点があります。この2つは同じとは限りません。
国民生活基礎調査の2025年調査では、所得を調べる票の調査日は2025年7月10日です。聞いているのは、前の年の1年間の所得です。575万2千円は「2024年の所得」で、「2025年の所得」ではありません。調査の名前に付いた年と、数字の年を取り違えるのは、いちばん起きやすい書き間違いです。
ページには、時点を次の3つに分けて書きます。
- 数字が指す期間:2024年1年間の所得
- 調べた日:2025年7月10日
- 私たちが出典を確かめた日:2026年10月26日
3つ目は、統計が新しい年の数字に置き換わったときに、どのページを直すかを決めるための日付です。年と年度の取り違えを機械で拾う方法は、数字の照合に書きました。
比べてよい数字、比べてはいけない数字
並べて比べてよいのは、同じ対象を、同じ定義で数えた数字だけです。
家計調査の解説には、定義が違う2つの中央値が並んでいます。2025年の二人以上の世帯の貯蓄現在高で、次のとおりです。
| 数字 |
金額 |
| 平均値 |
2,059万円 |
| 貯蓄保有世帯の中央値 |
1,264万円 |
| 貯蓄0の世帯も含めた中央値 |
1,167万円 |
出典:総務省統計局 家計からみるファミリーライフ、家計資産(2026年10月26日確認)
統計局は、貯蓄保有世帯の中央値を、貯蓄が0の世帯を除いて並べたときの真ん中の世帯の額と定めています。同じ調査の同じ年でも、0の世帯を含めるかどうかで97万円違います。記事で「中央値は1,264万円」とだけ書くと、どちらの定義かが読む人に伝わりません。
違う調査どうしは、さらに注意が要ります。国民生活基礎調査の所得は世帯ごとの金額で、雇用者の所得は税金や社会保険料を含む額と定められています。働く人1人ずつの手取りを調べた数字と並べて「差がある」と書くのは、比べ方が間違っています。
並べる前に、表の注を読む
統計表の下の注には、対象から外した世帯や、金額の定義が書かれています。国民生活基礎調査は、単身赴任者や施設に入っている人などを対象から外しています。注を読まずに、ほかの調査と並べないでください。
ページに書くときの形
ここまでの3つを、数字の横にまとめて書きます。たとえば次の形です。
2024年の1世帯当たり平均所得金額は575万2千円、中央値は451万円(厚生労働省 2025年国民生活基礎調査、集計16,921世帯からの推計)。
長く見えますが、読む人はこの1文で、数字の意味と重みと時点をその場で確かめられます。AIの回答に引用されるときも、時点と定義が一緒に付いた文のほうが、別の年の数字と混ざりにくくなります。
ランキングのように、数字を並べるページを作るときの母数の書き方はランキングページの作り方にまとめました。データで作るサイト全体の考え方はデータベース型サイトから読めます。
仕様・出典の確認日:2026年10月26日。