ファイアウォールは通信を通すか止めるかを決める機能で、UTMはその機能にIPSやウイルス対策などを足して1台にまとめた機器です。
今日やることは、手元の見積書を開いて次の3つが書いてあるかを見ることです。有効にする機能の一覧、ライセンスの年数、その機能を有効にしたときの速度です。書いていなければ、販売店に聞きます。機種名を調べるより、この3つのほうが判断の役に立ちます。
同じ機種がどちらの名前でも売られるのはなぜ?
ファイアウォールが機能の名前で、UTMや次世代ファイアウォールが製品の括り方だからです。1台の機械に、呼び名が重なっています。
フォーティネットはUTMの解説ページで、FortiGateを「UTMの機能をすべて備えたNGFW」と説明しています。必要な機能をオンにすればUTMになり、ファイアウォールとしてだけ使うこともできるとも書いています。同じページには、両者の違いは表面的には意味の違いに見えるが、いくつか違いがある、という書き方もあります。
その FortiGate を、NTT西日本はAQStage UTMマネージドパックの機種として載せています。メーカーは次世代ファイアウォールと呼び、販売側はUTMと呼んでいることになります。
ヤマハのUTX100は「UTMアプライアンス」として売られていますが、仕様表には「NGFWスループット」の行があります。逆に、チェック・ポイントの比較ページは、UTMは人手の少ない小さな組織向け、NGFWはアプリケーションの層まで深く見るものと分けています。メーカーの間でも線の引き方はそろっていません。
だから、見積書の品名からは「どちらなのか」が決まりません。見るのは、その見積もりで何を有効にするかです。
見積書の機能欄はどう読む?
機能の行は、次の表のように読みます。品名がファイアウォールでもUTMでも、読み方は同じです。
| 見積書の語 |
していること |
確かめること |
| ファイアウォール |
宛先や送り元で通信を通すか止める |
誰がルールを変えるか |
| IPS |
侵入と見られる通信を止める |
止めるのか、記録だけか |
| アンチウイルス |
通信の中のファイルを調べる |
対象の通信の種類 |
| Webフィルタ・URL |
危険なサイトへの接続を止める |
社外のパソコンにも効くか |
| アンチスパム |
迷惑メールを止める |
クラウドメールでも効くか |
| アプリケーション制御 |
使うアプリで通信を分ける |
対象のアプリ |
| VPN |
社外と社内を暗号化してつなぐ |
接続の方式と台数 |
確かめる欄がいちばん大事です。たとえばNTTスマートコネクトのクラウド型UTMのページは、アンチスパムの対象をIMAP、POP3、SMTPと書いています。同じ「アンチスパム」でも、自社のメールがこの機器を通らなければ、その行は仕事をしません。Microsoft 365 や Google Workspace を使う会社は、メールの通り道を販売店に見せて聞いてください。
IPSの行が気になるときは、IDS・IPSの製品比較で検知と遮断の違いを見ると、質問を作りやすくなります。
速度はどの数字を見ればいい?
見積もりで比べる数字
- 使う機能をすべて有効にしたときの速度
- 暗号化された通信を調べるときの速度
- 自社の回線の実際の速度
仕様表で一番大きな数字は、ファイアウォールだけを動かしたときの速度です。機能を有効にすると、数字は大きく下がります。公式の仕様から3機種を並べました。
| 機種 |
FWのみ |
NGFW |
全機能に近い測定 |
| ヤマハ UTX100 |
2.0Gbps |
600Mbps |
340〜440Mbps |
| ヤマハ UTX200 |
6.4Gbps |
970Mbps |
500〜650Mbps |
| FortiGate-70G |
10Gbps |
1.5Gbps |
1.3Gbps |
出どころはUTX100の仕様、UTX200の仕様、FortiGate 70Gシリーズのデータシートです。ヤマハの幅は Smart Accel という機能の有無による差です。各社の測定条件は同じではないので、機種の優劣ではなく「機能で数字がどれだけ変わるか」として読んでください。
暗号化された通信を調べる場合は、別の行を見ます。FortiGate-70G のデータシートには、SSL Inspection の速度が1.4Gbpsと別に書かれています。見積書に「暗号化通信の検査」が入っているなら、その数字が基準になります。入っていなければ、調べる設定にするのかを質問に入れます。
もう1つ、社外からつなぐ人がいる会社は VPN の行を見ます。同じデータシートでは IPsec VPN が7.1Gbpsで、SSL-VPN の欄は N/A です。今の接続が SSL-VPN なら、機種を替えてそのまま使えるのかを確かめる必要があります。
ライセンス欄で確かめることは?
機械の値段と、機能を動かす権利の値段は別です。ここを読み違えると、2年目の費用が合わなくなります。
ヤマハのUTXシリーズのリーフレットは、本体に1年分のライセンスが付き、2年以上使うなら別に必要だと書いています。5年使う例として、本体と4年分のライセンスの組み合わせを示しています。このリーフレットは2021年1月のものなので、現在の条件は販売店に確かめてください。
付いてくるものも製品で違います。サクサのSS7000Ⅲには、ウイルス駆除で解決しなかったときに最大100万円を補償するサイバー保険が標準で付いています。設置日で内容が変わるとの注記もあります。金額だけ並べると、こうした違いが見えません。
販売店には次のように聞きます。回答はメールで残します。
- この金額で有効になる機能はどれで、何年分か
- 更新はいくらで、値上げの条件はあるか
- ライセンスが切れると、止まる機能と通信への影響は何か
- 全機能を有効にしたときの速度は、回線の速度を下回らないか
- 機器の更新作業と故障時の交換は誰がするか
- 製品の保守が終わる時期はいつか
製造業の見積もりで見落としやすい行は?
VPN の行です。警察庁の令和7年の報告では、ランサムウェアの被害報告は226件で、中小企業が約6割、製造業が約4割でした。被害組織へのアンケートで、侵入経路は VPN 機器が6割以上です。IPAの情報セキュリティ10大脅威2026の解説書に載る表でも、2025年の VPN 機器は66.3%です。回答した組織の範囲での割合として読みます。
VPN は機能の1行にすぎないので、見積書では目立ちません。それでも、ファームウェアの更新を誰がするかは必ず決めておきたい行です。
たとえば、本社と工場が1つずつあり、工場の保守業者が設備に外からつなぐ場合を考えます。この場合、VPN の利用者には社員だけでなく社外の業者が入ります。見積もりを頼むときに、接続する人数と接続先の設備を一覧にして渡すと、必要な方式と台数が見積もりに反映されます。工場の中だけで動く通信は境目の機器を通らないので、この見積もりの範囲には入りません。その点はネットワークの守り方の一覧から別に考えてください。
ファイアウォールだけの見積もりでよい会社は?
ほかの機能を別の製品で持っているなら、ファイアウォールだけという選択もあります。メールの検査をクラウドメールの側で行い、Webの検査を端末側の製品で行っている会社では、UTMの機能と重なることがあります。同じ機能に二重に払っていないかを、見積書と今の契約を並べて確かめます。
Webの検査をどこで持つかは、社外で働く人の数で変わります。社外のパソコンの通信は境目の機器を通らないことが多く、その場合はSWGの製品比較のようなクラウド側の製品が検討に入ります。機器をクラウド型に替えると費用がどう変わるかは、クラウド型UTMの価格と得になる会社の条件で計算しています。
機器そのものの速度とポート数は、ファイアウォールとUTM機器の比較で公式の数字を並べています。見積書の機種と同じ行を見ると、ここまでの質問の答え合わせができます。