UTMのリース相場は、公的な統計が見当たりません。公開されている例はありますが、機種も条件も違います。月額ではなく「月額×回数」の総額を出し、同じ期間の現金購入と比べてください。
今日やることは2つです。今の見積書かリース契約書から、月額、回数、機種の型番、保守の期間を書き出してください。そのうえで、同じ機種の現金購入の見積もりを、別の会社からもう1通取ります。
電話や訪問で勧められていて、まだ署名していない場合は、急いで決めないでください。リースは署名の後に元へ戻しにくい契約です。
UTMのリースの公開例はいくら?
私たちが確かめた範囲では、公的な統計や業界団体の相場の数字は見つかりませんでした。公開情報から読める例は次のとおりです。
| 公開情報の例 |
金額 |
読むときの注意 |
| 販売店が案内するSS7000Ⅲシリーズ |
リース月額7,800円(税抜) |
設定費込み。2024年7月更新の掲載で、回数の記載は確認できず |
| ヤマハ UTX100 |
希望小売価格176,000円(税込) |
購入の価格。初年度のセキュリティーライセンス付き |
| お助け隊サービスの基準 |
ネットワーク監視は月額1万円(税抜)以下 |
リースではなくサービスの上限。初期費用の合計は50万円(税抜)以下、最低契約期間は2年以内 |
同じものの価格ではないので、表の金額だけで高い安いは判断できません。
計算の例を1つ示します。月額7,800円で仮に60回払うと、総額は468,000円(税抜)です。これは計算の説明で、実際の契約の回数ではありません。自社の見積もりの数字に置き換えてください。
現金購入とはどう比べる?
比べる項目をそろえて、空欄を埋めます。
| 項目 |
リースの見積もり |
現金購入の見積もり |
| 本体 |
月額に含むか |
金額 |
| 初期の設定と設置 |
月額に含むか |
金額 |
| 2年目以降のライセンス |
何年分か |
年額×年数 |
| 保守と駆けつけ |
範囲と年数 |
年額×年数 |
| 総額 |
月額×回数+別料金 |
合計 |
ここで差が出るのは、期間のそろえ方です。たとえば、ヤマハのUTX100の価格には初年度のライセンスが付きますが、2年目以降の費用は別に確かめます。ファイナンス・リースのリース料は、リース事業協会の説明では、物件代金と諸費用のおおむね全部を回収する前提で決まります。つまり、資金繰りを平らにできる一方で、物の代金が消えるわけではありません。
最終的な税や会計の扱いは、顧問の税理士に確かめてください。新しいリースの会計基準として企業会計基準第34号も出ているので、自社への適用の有無を含めて聞いてください。
途中で解約したらどうなる?
原則として、解約できないと考えてください。リース事業協会は、ファイナンス・リースの特徴として、基本的にリース期間中の解約は禁止され、解約する場合は残期間のリース料か相当の違約金を一括で払う契約だと説明しています。
たとえば、工場を移転する、機種を替える、会社の回線の構成を変えるといった事情でも、残りの支払いが消えるわけではありません。5年の途中でクラウド中心の構成へ移りたくなっても、この支払いは続きます。将来の入口をSASEへ替える可能性があるなら、SASEの製品比較も見て、契約期間を決めてください。
買い替えを勧められたときも同じです。協会の小口リースの注意喚起(2012年12月発行)は、「今の残債務は販売店が全額負担する」という虚偽の説明の例を挙げ、残債務がなくなることはないとしています。見積書に残債務の記載があるかを確かめ、無ければ支払いの扱いを書面で確かめます。
保守が切れると何が起きる?
リース会社は機器の保守をしません。協会の案内では、保守が必要な物件は別途、販売店との間で保守契約を結び、書面にすることを勧めています。リース料を払っているから機器が守られる、というものではありません。
同じ協会のリース契約書の主な条項では、ユーザーが保守と修繕の負担を持ち、物件の不適合についてリース会社は責任を負わず、リース料の支払いも免れないとされています。機器に不満があっても、支払いは別の問題として残ります。
UTMで特に見るのは次の4つです。
- 定義の更新のライセンスが、リースの全期間を覆っているか
- 故障したときの交換の条件と、駆けつけの範囲
- 販売店が廃業したり、事業をやめたりしたときの保守の扱い
- 機種のサポート終了日が、リースの満了より先か
4つ目は見落としやすい点です。たとえばFortinetの製品ライフサイクルの説明によると、ハードウェアのサポート終了は一般に受注終了から60か月後で、終了を越えるサービス契約はできません。発売から年数が経った機種を5年で契約する前に、終了日を聞いてください。
ライセンスが切れたときの機器の動きは、FortiGateのUTMライセンスが切れたらで機能ごとに整理しています。期間のずれがあると、支払いは続くのに守りの更新が止まる期間ができることがあります。
署名の前に確かめることは?
見積書と契約書を並べて、次の項目を確かめてください。
- リース料の月額、回数、総額
- リース会社の名前と、申込書に書かれた物件の型番
- 含まれるライセンスの名前と年数
- 保守契約の相手、範囲、期間、解約の条件
- 設定作業の範囲と、変更するときの費用
- 満了のときの返還か再リースか、再リースの料金
- 機器のサポート終了日
- 移転、廃業、機種変更のときの扱い
- 残っている別のリースの残債務
- 機器の中のデータと設定の消去の方法
満了の後も、機器はリース会社のものです。協会の説明では、返還するか再リースをします。返還の条項には、原状回復の負担も書かれています。設定情報が残る機器なので、返す前の消去の手順も聞いておきます。
引き渡しの手続きにも注意が必要です。リース契約書の説明では、ユーザーが物件を検査して物件借受証を出し、それをリース会社が受け取るとリースが始まります。設定が終わっていないのに借受証を求められたら、作業の完了を待てないか相談してください。
法人の契約はクーリング・オフできる?
頼らないほうが安全です。協会の案内は、事業者間の取引にはクーリング・オフ制度が適用されないとしており、特定商取引法の第26条にも営業のための契約を適用除外とする規定があります。
例外が争われた事例もあります。消費者庁の特定商取引法ガイドの事例は、電話機のリースで事業者間契約を装う悪質な手口を説明しています。個別の判断になるので、困ったときはリース会社の窓口、顧問の専門家、消費生活センターなどに早めに相談してください。
協会の案内は小口リースの対象の例に「セキュリティ関連機器」を挙げ、販売店との商談では見積書で取引内容を確かめるよう勧めています。説明と書面が違うときは、書面のほうを前提に考えます。
リース以外の選択肢は?
購入のほかに、監視まで含む月額のサービスや、クラウド型への移行があります。契約の前に、そもそもUTMで守りたいものが何かを確かめてください。IDS・IPSだけを強くしたいのか、入口全体なのかで候補は変わるので、IDS・IPS製品の比較の見方も使えます。
機種と公開価格はUTM・ファイアウォール機器の比較で確かめられます。社内で判断しきれない規模の契約なら、販売店から独立した立場の相談先をセキュリティコンサルの比較で探す方法もあります。入口の守り全体は、ネットワークのセキュリティのカテゴリにまとめています。