サーバー向けセキュリティソフトは、対応するOSの版を最初に確かめ、次に業務システムへの影響で選びます。
今日やることは、サーバーの一覧を作ることです。台ごとに、OSの版、役割、動いている業務ソフト、止めてよい時間帯、担当の会社を書きます。PC用のソフトが既に入っているサーバーがあれば、印を付けます。
パソコンと同じ感覚で選ぶと、機能の数を比べて終わりがちです。サーバーでは、止められるかどうかと、業務の処理を遅くしないかどうかが先に来ます。Webサイトのセキュリティ対策の一覧の中でも、この記事はサーバーの内側の守りを扱います。
PC用をサーバーに入れると何が問題?
問題は大きく分けて4つあります。
まず対応OSです。PC用の製品はWindows Serverや業務で使うLinuxに対応していない場合があり、インストールできても対応外なら、不具合の際にメーカーの支援を受けられない可能性があります。使用条件の面でも、サーバーへの導入が許されているかを契約で確かめます。
次に業務の処理への影響です。ESETのサーバー向け製品の案内は、サーバーアプリやOSの開発元が重要なファイルの除外を勧めていて、検査がサーバーの性能に悪い影響を与える場合があると説明しています。PC用の初期設定が、こうしたサーバーの役割に合っているとは限りません。
三つ目はデータベースです。MicrosoftのSQL Serverの文書は、除外すべきプロセスやフォルダ、拡張子を具体的に挙げています。除外は性能の向上と、SQL Serverが必要なファイルのロックを避けることに役立つと説明しています。導入の前後で実際の負荷をかけて測るようにも書いています。
四つ目は再起動や更新です。サーバーは簡単に止められません。更新の配信や再起動の扱いを管理者が決められないと、業務の時間に影響する場合があります。
サーバー向けはどこが違う?
一番の差は、サーバーの役割に応じた除外と、止めにくいサーバーを前提にした機能です。
Microsoft Defenderの文書によると、Windows Server 2016以降では、インストールされた役割に応じて重要なファイルとプロセスを自動で除外します。ESETのサーバー向け製品も、重要なサーバーアプリとOSのファイルを識別して除外の一覧に足すと説明しています。
ただし、自動で全てが解決するわけではありません。
- Microsoftの文書は、Windowsの機能や役割に含まれないソフトの除外は、そのソフトの資料を見るよう案内しています
- ESETの案内では、SQL Serverのデータベースが既定の場所にない場合は、手動の追加か権限の設定が必要です
- 業務パッケージの除外は、その会社に聞かないと分かりません
製品によっては、サーバーの不正な変更を見る機能、許可したものだけを動かす機能などを持ちます。比べるときは、サーバーセキュリティの製品比較の仕様の欄が役に立ちます。パソコンとサーバーを1つの管理画面で扱いたい場合は、法人向けセキュリティソフトの比較も並べます。
選ぶときは何の順番で確かめる?
次の順で絞ると、後で入らないと分かる失敗を避けられます。
| 順 |
確かめること |
聞く相手 |
| 1 |
OSの版が対応表にあるか |
製品のメーカー |
| 2 |
サーバーの役割と業務ソフトの除外 |
業務ソフトの会社 |
| 3 |
必要なCPU、メモリ、ディスク |
製品のメーカー |
| 4 |
検知後の調査と隔離を誰が行うか |
社内、保守の会社 |
| 5 |
更新の配信方法と再起動の扱い |
製品のメーカー |
4番は、製品の機能より人の話です。攻撃を見つけたあとの調査まで求めるなら、EDRの製品比較で隔離や調査の機能を見ます。ただし、通知を受ける人がいなければ機能は使われません。夜間の通知を誰が受けるかも一緒に決めます。
OSの版は、製品選びの前に片づく問題かもしれません。Windows Server 2012 R2は、2023年10月に延長サポートが終わり、有償の拡張セキュリティ更新の3年目も2026年10月に終わりました。Windows Server 2016の延長サポートは2027年1月に終わります。ソフトを入れても、OSの修正が出ない問題は解決しません。更新の計画と一緒に考えます。
Windows Server 2012 R2では、Defenderが組み込まれておらず、自動の役割の除外も使えません。古い版ほど手作業が増えると考えてください。
Linuxサーバーでは何を確かめる?
Linuxでは、配布版の対応と、他のソフトとの競合を先に確かめます。ここはMicrosoft Defender for EndpointのLinux版の文書を例にします。製品ごとの条件は各社の対応表で確かめてください。
必要条件の文書には、次のように書かれています。
- 最低でCPU 1コア、ディスク 2GB、メモリ 1GB。負荷の高い処理ではさらに必要になる場合がある
- 一覧にない配布版と版は対応外
- カーネルの版は3.10.0-327以降が最低の要件
- Fanotifyを使う他のセキュリティ製品との同時利用は対応外で、システムが固まるなど予期しない動きになる可能性がある
監視を行う部分の仕組みも確かめます。eBPFの文書によると、この製品のeBPFセンサーはカーネルモジュールを必要としません。特定のカーネルでは問題が報告されているとも書かれています。カーネルを固定して運用している業務システムなら、保守の会社に確認してもらいます。
処理への影響は、性能の問題の調べ方が参考になります。短時間にCPUやディスク、メモリを多く使うアプリは、性能の問題につながりやすいと説明しています。同じ文書は、他のセキュリティ製品が動いていないことを最初に確かめるよう案内しています。
除外については、Linuxでよくある誤りの文書が、同じ一覧を使い回さず、業務ごとに必要なプロセスとパスを特定するよう書いています。
除外はどこまで設定してよい?
除外は性能のために必要な場合がありますが、検査しない場所を作ることでもあります。
Microsoftの同じ文書は、除外した項目に脅威が含まれている可能性を示し、Temp フォルダなどは除外しないよう挙げています。また、Linuxの除外の文書によると、ウイルス対策の除外と、EDRまで含む全体の除外は別物です。後者は検知そのものを止めるので、影響が大きくなります。
除外を頼まれたとき
「遅いので全部除外した」は避けます。除外の対象、理由、頼んだ会社、日付を台帳に残します。業務ソフトの更新や入れ替えのときに、見直しの手がかりになります。
買う前にどう試す?
業務に近い負荷で1台試します。
たとえば、生産管理のサーバーでSQL Serverを使っている工場の場合、昼間の照会だけ試しても足りません。夜間の所要量の計算、月末の締め、バックアップのように、ディスクを多く使う時間帯まで見ます。図面のファイルサーバーなら、設計の担当者が大きなファイルを開く速さも測ります。
進め方は次のとおりです。
- 入れる前に、処理時間とCPU、ディスクの使用率を記録する
- テスト環境か影響の小さい1台に入れる
- 同じ処理を流して比べる
- 検知の通知が担当者に届くかを、メーカーが用意する無害な試験の方法で確かめる
- 元に戻す手順を確かめてから、他のサーバーへ広げる
今のソフトから入れ替えるときは、順番にも注意します。Windows Server版のDefenderの文書によると、Microsoft以外のウイルス対策製品があるとDefenderはパッシブモードになっている場合があり、外すと動作が変わることがあります。どの製品が動いているかを、入れ替えの前後で確かめます。
サーバーのソフトで守れないものは?
サーバーのソフトは、入ってきた後の動きを見る守りが中心です。外から来る通信を減らす役目は別のものが担います。
情報セキュリティ10大脅威 2026の組織編は、1位がランサム攻撃です。ファイルサーバーや業務のサーバーが暗号化されると、ソフトの有無にかかわらず、戻せるかどうかはバックアップにかかります。中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版でも、バックアップが情報セキュリティ6か条に新たに加わりました。ソフトの選定と同じ日に、戻す試験の予定も決めておくと、作業が1回で済みます。