SSLとTLSの違いは、SSLが古い世代の暗号化の仕組みで、TLSがその後継である点です。今のサーバーで有効にしてよいのはTLS 1.2と1.3だけです。
今日やることは、自社の公開サイトを無料の診断にかけることです。Qualys SSL LabsのSSL Server Testに自社のサイトの名前を入れると、サーバーが対応するバージョンを含む設定を分析します。結果を公開の一覧に載せたくなければ、「Do not show the results on the boards」にチェックを入れます。
この記事は公的なガイドラインと各ソフトの公式文書を整理したものです。私たちが各社のサーバーで検証したものではありません。サイトの守り方全体はWebサイト・サーバー防御のカテゴリにまとめています。
SSLとTLSはどう違う?
TLSはSSL 3.0をもとに作られました。呼び名は「SSL/TLS」とまとめられることが多いのですが、古い世代を今も動かしてよいという意味ではありません。
混同しやすいのが「SSL証明書」です。名前にSSLと付いていますが、証明書を新しくしても、受け付けるバージョンは変わりません。証明書とバージョンは別の設定です。証明書の種類と管理の方法はSSL証明書の製品比較で見比べられます。
どの基準に合わせればいい?
国内の基準は、CRYPTRECが作成し、IPAが公開しているTLS暗号設定ガイドラインです。今の版は2025年4月25日公開の第3.1.1版で、3つの設定基準があります。
TLS暗号設定ガイドラインの3つの基準
- 高セキュリティ型:TLS 1.3と1.2を有効にし、SSL 2.0からTLS 1.1までを無効にする
- 推奨セキュリティ型:TLS 1.2を有効にし、SSL 2.0からTLS 1.1までを無効にする。TLS 1.3は実装があれば有効にする
- セキュリティ例外型:SSLは無効。TLS 1.0と1.1は、やむを得ない場合に限り認める
多くの会社は、推奨セキュリティ型が目標になります。ガイドラインが「一般的な利用形態」と位置づけているからです。
セキュリティ例外型は、ずっと使える逃げ道ではありません。ガイドラインは、例外型の内容を2029年度を目途とした改訂で終わらせる予定とし、速やかに推奨セキュリティ型へ移るよう求めています。古い機器のために例外型を選ぶ場合は、入れ替えの時期も一緒に決めてください。
自社のどこを確かめる?
確かめる先は、公開サイトだけではありません。TLSはメールの送受信や機器の管理画面でも使われます。ガイドラインも、TLSを使うリモートアクセス(SSL-VPN)に1章を割いています。次のものを一覧にします。
- 会社のサイト、採用サイト、キャンペーンサイト
- 問い合わせフォームや受発注など、別のサーバーで動くもの
- メールサーバー
- VPN機器
- NAS、複合機、ネットワーク機器の管理画面
- 社内の業務システムやファイル共有の画面
公開サイトは、冒頭のSSL Server Testで確かめます。診断の対象は公開されたサーバーなので、社内の機器には使えません。
社内の機器は、管理者のパソコンからOpenSSLで接続を試します。openssl s_clientの公式文書のとおり、-tls1_1 や -tls1_2 で使う版を指定できます。自社で管理する機器だけに行ってください。
openssl s_client -connect サーバー名:443 -tls1_1
openssl s_client -connect サーバー名:443 -tls1_2
上の接続が失敗し、下が成功すれば、古い版は受け付けていない可能性が高いと言えます。ただし公式文書は、接続の失敗にはいくつもの原因があると記しています。手元のOpenSSLの設定で断っている場合もあるので、最終的には機器の設定画面や設定ファイルでも確かめます。
止める前に何を確かめる?
古い版でつないでいる相手がいないかを確かめます。いきなり止めると、古い機器や取引先のシステムがつながらなくなることがあります。
相手はログで調べられます。nginxの$ssl_protocolとApacheのSSL_PROTOCOLは、接続に使われたバージョンを返す変数です。これをアクセスログに記録するよう設定し、しばらく様子を見ます。月に一度しかつながない機器もあるので、月末の処理が終わるくらいの期間は残します。
たとえば製造業で、受発注のサーバーに工場の古い端末や取引先のシステムがつないでいる場合です。古いOSの端末は、TLS 1.2に対応していないことがあります。ログでTLS 1.0の接続元が見つかったら、誰の何の機器かを工場や購買の担当に確かめます。その後、端末の更新、取引先への連絡、例外型での暫定運用のどれにするかを決めます。
ブラウザだけを使う一般の閲覧者への影響は小さいと見てよいでしょう。Microsoftの案内によると、Microsoft EdgeはTLS 1.0と1.1がバージョン84以降で既定で無効です。同社は、TLS 1.0と1.1への依存をなくすよう呼びかけています。
設定はどこで変える?
サーバーの種類で場所が変わります。自社で触れないものは、誰に頼むかを決めます。
| 使っているもの |
変える場所 |
注意 |
| Apache |
SSLProtocol |
既定の all -SSLv3 は、TLS 1.0と1.1を除いていない |
| nginx |
ssl_protocols |
TLSv1.2 TLSv1.3 のように書く |
| Windows(IIS) |
IPAのIIS用設定例を見る |
レジストリの直接編集は慎重に |
| CDN・WAF |
サービスの最低TLS設定 |
元のサーバー側も別に確かめる |
| レンタルサーバー・保守委託 |
管理画面か事業者への依頼 |
自社で変えられないことがある |
Apacheの既定値は、公式文書に載っています。all は全バージョンを指すので、そこからSSL 3.0だけを除いた形です。何も指定していないサーバーでは、ソフトの組み合わせによって古いTLSが残ることがあります。
具体的な設定例は、ガイドラインのページにある「サーバ設定編」と「Windows IIS用」が使えます。Windowsのレジストリについて、Microsoftの文書は、ほかに方法がない場合を除いて直接編集しないよう勧めています。編集が必要なら、保守の担当と進めてください。
CDNやWAFを前に置いていると、利用者との暗号化はそのサービスが受け持ちます。Cloudflareの最低TLSバージョンの設定のような項目がそれにあたります。診断の結果がよくても、CDNと元のサーバーの間の設定は別に残るので、両方を見てください。WAFの選び方はWAFの製品比較で確かめられます。
止めたあとは何をする?
同じ診断をもう一度かけ、結果を残します。そのうえで、古い版でつないでいた相手に問題が出ていないかを確かめます。障害に備え、元の設定に戻す手順と連絡先も控えておきます。
TLSの設定だけでは足りません
TLSが守るのは通信の途中です。サーバーのソフトが古い、管理画面のパスワードが弱いといった問題には効きません。ガイドラインの7章も、まず最新のセキュリティパッチを当てるよう挙げています。
サーバー全体の見直しは社内とクラウドで違うサーバーの点検項目に分けて書きました。サーバーの中まで製品で補うなら、サーバーセキュリティの製品比較も見られます。古い版を止める作業中に見覚えのない接続が見つかった場合は、不正アクセスをログで調べる方法へ進んでください。
社内の報告には、一覧の機器数のうち、古い版が止まっている数と残っている数を書きます。残った機器には、理由と入れ替えの時期を添えます。2029年度という区切りがあるので、予算の話も早めに切り出せます。