DoS攻撃とDDoS攻撃の違いは、攻撃元の数です。DoS攻撃は1台のコンピュータから、DDoS攻撃は多数のコンピュータから大量の要求を送り、相手のサーバーやネットワークを使えなくします。定義は総務省の用語集によります。
今日やることは、対策の有無を外部の相手に聞くことです。サーバー会社と回線事業者に、DDoS攻撃を受けたときの対応と窓口を確認します。あわせて、サイトが止まったときに取引先へ知らせる手段を決めてください。
攻撃元の数で防ぎ方はどう変わる?
変わるのは、送信元を止める対策の効き方と、止める場所です。次の表は、当時の内閣サイバーセキュリティセンターの注意喚起(2025年2月)の対策を、攻撃元の数で分けた私たちの整理です。
| 見る点 |
DoS攻撃(1台) |
DDoS攻撃(多数) |
| 送信元を止める効果 |
効きやすい |
送信元が多く、1つずつでは追いつかない |
| 止める場所 |
サーバーや自社の機器でも対応できる場合がある |
回線事業者、クラウド、配信サービスなど自社の手前も使う |
| 効く設定の例 |
同じIPアドレスからの大量の要求を遮断 |
地域の絞り込み、配信サービス、専用の対策サービス |
| 準備の中心 |
機器の設定と更新 |
外部サービスの確認と、止まったときの手順 |
1台から来る攻撃なら、同じIPアドレスからの要求がしきい値を超えた時点で遮断する方法が候補になります。ただし、送信元のIPアドレスが偽られる場合もあるので、表示されたアドレスだけで相手を決めつけないでください。
多数から来る攻撃では、1つの送信元からの量が少なくても合計で大きくなります。総務省の用語集によれば、DDoS攻撃では第三者のコンピュータをボットに感染させ、指示を受けたボットが一斉に攻撃する例があります。
自社の回線そのものが埋まると、社内のファイアウォールで通信を捨てても、回線は空きません。だから、DDoS攻撃では止める場所を自社より手前へ広げます。
どのくらいの規模で、どんな攻撃が来る?
2023年の警察庁と内閣サイバーセキュリティセンターの注意喚起は、2022年9月の一連の攻撃を分析しています。攻撃元のIPアドレスは約99%が海外に割り当てられたもので、通信量の増加は約7Mbpsから約100Gbpsまでの幅がありました。
同じ資料は、TCP SYNフラッドとHTTPフラッドなどの手口を挙げています。前者は接続の処理に関わる資源を、後者はWebサーバーの処理を圧迫します。AWSの解説も、攻撃の種類をネットワーク層、通信層、アプリケーション層に分けています。
種類が分かると、担当する製品も分かります。
- 大量の通信で回線や機器を圧迫する攻撃:回線事業者、クラウド、配信サービス、DDoS対策の専用サービス
- Webサイトへ正規の形の要求を大量に送る攻撃:WAF、配信サービス、要求数の制限
IPAの情報セキュリティ10大脅威 2026では、組織向けの9位にDDoS攻撃が入っています。上位のランサムウェアほど話題にならなくても、備えを外してよい脅威ではありません。
中小企業はどこから手を付ける?
順番は、外部の対策の確認、自社の設定、止まったときの備えです。2025年の注意喚起は、対策には多くの費用と時間が要るものがあり、すべての攻撃を防げるわけではないと述べたうえで、身近な対策を求めています。
1. 外部の対策を確かめる
回線事業者やクラウド事業者が提供する遮断の仕組みを確かめます。AWSなら追加料金なしのShield Standardが自動で適用されるので、StandardとAdvancedの違いを見てください。
配信サービスの中には、無料の範囲で対策を提供するものもあります。たとえばCloudflareの資料は、DDoS攻撃の検知と緩和をすべてのプランで利用できるとしています。ただし、配信サービスを使う場合は、元のサーバーのIPアドレスを隠さないと直接狙われます。
製品を探すときは、DDoS対策サービスの比較で対応する範囲を見比べます。
2. 自社の機器と設定を見直す
機器やサーバーにある防御機能を有効にして、ソフトウェアを更新します。導入済みの機器の機能を確かめるときは、ファイアウォールの製品比較で機能の種類を押さえると、仕様書を読みやすくなります。
Webサイトの場合は、WAFの設定で決めることも確認します。製品の候補はWAFの製品比較で見られます。
国内からしか使わないサイトなら、海外に割り当てられたIPアドレスからの通信を遮断する方法も効果があります。注意喚起も有効な方法として挙げています。
たとえば、機械メーカーが見積もりサイトを国内の顧客だけに公開している場合なら、検討しやすい方法です。海外の工場や代理店も使っているなら、先にその接続元を洗い出します。正規の通信を止めてしまうと、攻撃と同じ結果になるからです。
3. 止まったときの準備をする
攻撃を完全には防げないので、止まる前提の準備が要ります。注意喚起が挙げる項目を、中小企業向けに短くすると次のとおりです。
- コストをかけても守るサービスと、一定時間なら止まってもよいサービスを分ける
- 普段の通信量を把握し、異常時に担当者へ通知が届くようにする
- 別のサーバーに「ただいまつながりにくい」という案内ページを置けるようにする
- SNSなど、サイト以外で状況を知らせる手段を決める
- 警察、関係機関、サーバー会社の連絡先をまとめ、サイトが使えないときの代替手段を書いておく
受発注が止まると困る会社は、電話やメールへ切り替える手順まで書いておきます。この手順があるかどうかで、攻撃中の判断の負担が変わります。
費用はどこにかければいい?
全部のシステムを同じ水準で守ろうとすると、費用が合いません。2025年の注意喚起が最初に挙げる備えも、コストをかけてでも守るサービスと、一定期間止まってもよいサービスの選別です。
たとえば製造業なら、次のように分けて考えられます。金額の線引きは会社ごとに違うので、止まった時間あたりの損失で決めます。
| システム |
止まったときの影響 |
備えの例 |
| 会社案内のサイト |
問い合わせの入口が減る |
案内ページとSNSでの告知 |
| 取引先向けの受発注 |
受注や出荷の連絡が止まる |
外部の対策サービス、代替の連絡手順 |
| 工場の生産管理 |
生産に響く |
外部に公開するシステムとの分離を確かめる |
注意喚起は、事業の継続に重要なシステムを、ほかのシステムとネットワークで分ける検討も求めています。会社のサイトが狙われても、受発注や工場まで一緒に止まらない形にしておく考え方です。
サーバーや回線を二重にする対策もあります。ただし、切り替えが許容できる時間内に終わることが条件です。予備の機器があっても、切り替えの手順を試していなければ、攻撃の最中に使えるとは限りません。
自社が攻撃に加担しないためには?
DDoS攻撃には、乗っ取られた機器がよく使われます。2025年の注意喚起によれば、当時の攻撃ではIoTボットネットなどが用いられ、ルーターやIPカメラの設定とアップデートが呼びかけられました。
工場や倉庫に置いたカメラ、古いルーターも対象です。機器の一覧を作り、初期設定のままのものや更新が止まったものがないかを確かめます。社内にDNSサーバーがあれば、外部の不特定のIPアドレスからの再帰的な問い合わせを許可しない設定にします。送信元のIPアドレスを偽った通信を外へ出さないフィルタリングも、同じ注意喚起が挙げる対策です。
サイトを広く守る順番は、Webサイトとサーバーのセキュリティで確かめられます。