DDoS攻撃の公式発表から読み取れるのは、止まるのがWebサイトだけではないこと、復旧までの時間に大きな幅があることです。
今日やることは、自社のサイトとメールが、どの会社のサーバーと回線で動いているかを書き出し、障害情報のページを1か所にまとめることです。サイトが止まったとき、自社への攻撃なのか、提供会社の障害なのかを最初に確かめるためです。
この記事で取り上げるのは、当事者の公式発表か公的機関の資料で確かめられた範囲だけです。原因の断定や犯人の推測はしません。発表した会社を評価する記事でもありません。発表があるから学べることがあります。Webサイトの守りの全体はWebセキュリティの解説で扱っています。
DDoS攻撃とは、どんな攻撃?
IPAの情報セキュリティ10大脅威 2026 解説書(組織編)は、DDoS攻撃を次のように説明しています。乗っ取られた複数の機器からなるネットワークから、インターネット上のサービスへ大量のアクセスを一斉に仕掛けて高負荷にする、または回線の帯域を占有して使えなくする攻撃です。
10大脅威 2026の組織編では9位に入っています。ただしIPAは、順位は対策の優先順位ではなく、自社の環境に合わせて考えるよう書いています。順位が低いから無視してよい、という読み方はしません。
公式発表で確かめた4件では、何が止まった?
新しいものから順に並べます。
| 発生時期 |
発表元 |
止まったもの |
影響の時間 |
| 2026年4月20日 |
CPI(レンタルサーバー) |
シェアードプランの一部のWeb、FTP、メール |
11時30分から13時25分 |
| 2025年7月30日 |
カゴヤ・ジャパン |
Webメール、コントロールパネル |
16時32分から17時47分 |
| 2025年6〜7月 |
ナード研究所(IPAの解説書より) |
メール、ホームページ |
6月26日から、ネットワークの復旧完了は7月31日 |
| 2025年1月2日 |
NTTドコモ |
gooサービス全般、OCNのトップページなど |
午前5時27分頃から午後4時10分 |
時間はいずれも発表や資料に書かれた数字です。攻撃の規模は発表によって書かれ方が違うので、この表では比べていません。
CPI:共用サーバーでは、使っている会社にも影響する
CPIの障害情報によると、2026年4月20日、断続的に発生したDDoS攻撃により、シェアードプランの一部でWeb、FTP、メールが使いにくくなりました。発生は11時30分、復旧は13時25分です。
レンタルサーバーのような共用の基盤が攻撃されると、利用している会社のサイトとメールにも影響します。発表はサーバーの提供会社から出るので、利用する側の社内では「自社のサイトが落ちた」と見えます。最初に提供会社の障害情報を確かめるのは、このためです。
カゴヤ・ジャパン:入口を絞って復旧した
カゴヤ・ジャパンの発表によると、2025年7月30日16時32分頃からWebメールに複数のIPアドレスから大量のログイン試行が発生し、Webメールとコントロールパネルにアクセスしづらくなりました。17時47分頃に攻撃のあった一部地域のIPアドレスからのアクセスを遮断し、正常にログインできることを確認しています。
この発表から学べるのは、利用者の業務を止めるのはWebサイトだけではないことです。Webメールとコントロールパネルは、社内の連絡と設定変更の手段でもあります。同じ入口に頼っていると、設定を変えたいときに管理画面へ入れないことがあります。
ナード研究所:原因が分かるまでに時間がかかることがある
IPAの解説書によると、ナード研究所では2025年6月26日にネットワークの不具合が起き、メールの受信とホームページへのアクセスができなくなりました。6月30日に問題の解消を公表したあと、7月9日に再びメールの送受信とホームページへのアクセスがしづらくなりました。その後、原因がDDoS攻撃であったこと、その時点で情報漏えいは確認されていないことなどを更新しながら公表し、7月31日にネットワークの復旧を完了しています。
ここで注目したいのは、最初に「ネットワークの不具合」として公表され、原因が後から明らかになった流れと、続報を重ねている点です。はじめから原因が分かるとは限らないので、分かった範囲を更新していく形が取れます。
NTTドコモ:影響が複数のサービスに及ぶ
NTTドコモの発表によると、2025年1月2日午前5時27分頃から、gooサービスやドコモの一部サービスが使いにくくなりました。原因はDDoS攻撃によるネットワークの輻輳で、アクセスしにくい状況は午後4時10分に回復しました。影響はgooサービス全般、OCNのトップページ、dメニューニュース、検索機能など複数に及びました。
回復後も、一部のコンテンツの更新への影響が残ると書かれています。アクセスが戻ることと、すべての業務が元に戻ることは別です。同じ発表は、同じ日に起きた決済サービスの障害はDDoS攻撃の影響ではないと切り分けて説明しています。同時に起きた障害でも、原因が同じとは限らないということです。
2024年末から2025年初めには、何が起きていた?
個別の会社ではなく全体の動きとしては、当時の内閣サイバーセキュリティセンターが2025年2月4日の注意喚起で、航空事業者、金融機関、通信事業者などへのDDoS攻撃が年末年始に相次いだと書いています。IoTボットネットなどが使われ、今後大規模な攻撃が起きる可能性も否定できないとしています。
事例から、何を準備しておく?
同じ注意喚起は、すべてのDDoS攻撃を未然に防げるものではないと書いています。だから、止まる前提の準備が要ります。4件の発表と注意喚起を重ねると、次の準備が見えてきます。
止まる前に決めておくこと
- コストをかけて守るサービスと、一定時間止まってもよいサービスの区別
- サイトが止まったときの連絡手段(SNS、別サーバーのお知らせページなど)
- サーバー、回線、DNSの提供会社の連絡先と障害情報のページ
- 警察や関係機関を含む通報先の一覧
- 平常時の通信量の把握と、異常時に担当者へ届く通知
たとえば、部品メーカーが自社サイトとメールを同じレンタルサーバーで動かしている場合を考えます。サイトが止まれば、メールも同時に使えなくなるかもしれません。取引先への納期連絡を電話やチャットに切り替える段取りを決めておくと、製造は止めずに済みます。受発注システムが別のサーバーなら、どの業務が巻き込まれるかが切り分けられます。
対策の種類はどう選ぶ?
注意喚起と解説書に並ぶ対策を、置き場所で分けると次のとおりです。
| 置き場所 |
対策 |
確かめること |
| 回線・クラウド |
提供会社のDDoS対策 |
今の契約に含まれるか、守れる容量 |
| サイトの手前 |
CDN、WAF |
元のサーバーのIPアドレスを隠せるか |
| 自社の機器 |
専用機、IDS/IPS、UTM |
回線自体が埋まる攻撃まで受けられるか |
| 設定 |
しきい値を超える通信の遮断、海外からの通信の制限 |
正規の通信への影響 |
海外からの通信の制限は、国内だけで使うシステムで特に有効だと注意喚起にあります。海外の取引先がいる会社は、正規の通信を止めないか確かめます。
IPAの解説書はDNSサーバーへの負荷をかける攻撃にも触れています。DNSが止まると、サイトとメールの両方に届かなくなる場合があります。自社のドメインのDNSがどう守られているかは、DNSの提供会社に確かめます。図鑑のDNSセキュリティの比較は、社内から危ない宛先への通信を止める製品が中心で、用途が違います。
製品とサービスは、DDoS対策サービスの比較で、守る場所と価格を並べて確かめられます。Webアプリへの攻撃も一緒に考えるなら、WAFの比較と、WAF製品の比較の見方が使えます。社内の出入口との役割分担はWAFとファイアウォールの違いで整理しました。