メール誤送信は、宛先を選ぶとき、送る直前、送った直後の3か所に対策を分けると減らせます。人の注意だけでは防ぎきれないので、メールの設定、社内の決まり、必要な場合のツールを組み合わせます。
今日やることは2つです。使っているメールの設定で、送信を取り消せる時間か遅らせる時間を延ばしてください。次に、社員に「最近ひやりとした送信」を聞き、宛先の間違いか、CcとBccの間違いか、添付の間違いかを分けて書き出します。
間違い方が分かると、どの対策から入るかが決まります。メール全般の対策はメールのセキュリティの一覧にまとめています。
誤送信はどこで起きている?
総務省は、誤送信の原因としてオートコンプリートによる宛先の誤入力やCcとBccの取り違いを挙げています。私たちは、対策を考えやすいように次の3つに分けて見ることを勧めます。
| 間違いの種類 |
起きる場面 |
向いた対策 |
| 宛先の間違い |
名前の候補から別の人を選ぶ |
候補の扱いを見直す、外部宛の確認 |
| CcとBccの間違い |
複数の社外宛に一斉に送る |
一斉送信の方法を変える |
| 添付の間違い |
別の取引先の書類を付ける |
ファイル名の決まり、送信前の確認 |
たとえば、金属加工の会社の営業担当が、A社向けの見積書をB社の同じ名字の担当者に送る場合を考えます。名字を入れて候補から選ぶ動作の中で起きるので、注意を呼びかけるだけでは止まりにくい間違いです。名字が同じ相手を選びにくくする、外部宛は送信前に宛先の会社名を見直す、といった手順のほうが止めやすくなります。
IPAの情報セキュリティ10大脅威2026(組織編)の10項目に、不注意による情報漏えいは入っていません。ただ、この順位は社会的な影響の大きさをもとに選ぶものです。自社で起きなくなったという意味ではありません。
設定で今日から変えられることは?
追加の費用がかからない順に見ていきます。
送信を取り消せる時間を延ばす
Gmailは、送信を取り消せる時間を5、10、20、30秒から選べます。設定は社員ごとに確かめ、30秒にそろえると説明が簡単です。
ただし30秒は、送った直後に気づいた場合の備えです。あとで気づいた間違いは取り消せないので、これだけでは足りません。
Outlookで送信を遅らせる
Microsoftの案内では、従来のOutlookは仕分けルールで全メールの配信を遅らせることができ、最大120分を指定できます。遅らせている間、メールは送信トレイに残ります。
長くしすぎると、急ぎのメールが届かない困りごとが増えます。私たちは、まず数分から始めて、社内の不満と気づきの回数を見て決める方法を勧めます。
新しいOutlookには送信のスケジュール機能がありますが、同じページによるとIMAPとPOPのアカウントでは使えません。自社のアカウントの種類を確かめてください。
宛先の候補と外部宛の知らせを見直す
Microsoft 365のExchange Onlineには、送信の前に注意を出すメールヒントの仕組みがあります。組織の外へ送ることを知らせるものや、大人数の配布グループに送ることを知らせるものがあり、大人数の基準は既定で25人を超えるメンバーです。出る条件は設定やアプリで変わるので、管理者が実際に送信画面で確かめてください。
社内のルールは何を決める?
長い規程にすると読まれません。A4で1枚に収まる範囲で、次を決めます。
1枚に書く決まり
- 外部へ送る前に、宛先の会社名、Cc、添付のファイル名を見る
- 社外の複数の相手へ一斉に送る方法を決める
- 個人情報や図面を送るときの手段を決める
- 添付のファイル名に取引先の名前を入れる
- 誤送信に気づいたら、誰に何分以内に知らせるかを決める
一斉送信は普段のメールソフトで送らない
総務省は、多くの宛先へ同時に送るときは通常のメールソフトを使わず、同報メールサービスの利用も検討するよう勧めています。
個人情報保護委員会の資料にも、会員1,000人超へのメールマガジンでBCCとCCを取り違えた例が載っています。展示会の案内や価格改定の通知など、複数の社外宛に送る機会が多い会社ほど、Bccの注意より先に、送り方を変えて間違いの余地を減らしてください。
重要な添付は送り方を決める
IPAの組織における内部不正防止ガイドラインは、誤送信の対策として外部宛の再確認機能、上司の承認を求める機能、添付が暗号化されていないと送れない仕組みを挙げています。
製造業なら、図面、見積書、従業員の健康診断の結果などから対象を決めます。全部のメールに同じ手順を求めると形だけの確認になるので、外へ出ると困るものに絞ってください。
2人で確認する場面を絞る
ダブルチェックは効きそうに見えますが、全部のメールに求めると続きません。一斉送信、個人情報を含む添付、初めて送る相手の3つなど、場面を限って決めます。確認する人には、本文より宛先と添付を見てもらいます。
ツールはどんなときに足す?
次のどれかに当てはまるなら、メール誤送信防止ツールの比較を見る価値があります。
- 確認の手順を決めたのに、守られているか分からない
- 外部宛のメールを上司が承認した記録を残したい
- 添付の扱いを、人の判断でなくメールの仕組みで揃えたい
- 送信の量が多く、人の確認では追いつかない
比べるときは、製品名の前に3つを確かめます。今のメール環境で使えるか、確認の画面が多すぎて全部を読み飛ばす形にならないか、社員を選んで止める設定を誰が管理するかです。
添付だけでなく、社外へ出してはいけない情報の持ち出し全体を見たい場合は、対象が広がります。DLP(情報漏えい対策)の製品比較の範囲です。
迷惑メールやなりすましへの備えも同時に見直すなら、メールセキュリティの製品比較が近い分野です。誤送信防止とは守る方向が逆で、送る側のミスと受ける側の攻撃は別の仕組みになることが多い点に注意してください。
ツールだけに任せない
確認画面は慣れると無意識に押すようになります。導入後も、確認画面で止まった回数や、送信を取りやめた回数が取れるなら見てください。止まった回数が多すぎるなら、確認の範囲が広すぎるかもしれません。
送ってしまったら何を分ける?
防ぐ手順と、起きたあとの手順は1枚にまとめて配ります。起きてから決めると遅れるからです。
IPAの情報漏えい発生時の対応ポイント集(2012年の第3版)は、送信先が分かる誤送信では受信者に謝り、受け取った情報の削除を依頼するとしています。個人データが含まれる場合は、会社として報告の要否を判断します。
個人情報保護委員会の事務局資料(2022年)では、要配慮個人情報、財産的被害のおそれ、不正の目的によるおそれは件数に関わりなく報告の対象で、それ以外は1,000件超で対象になると説明しています。報告の判断と社内の決まりはメール誤送信を報告しないとどうなるかの記事で詳しく扱います。
逆の立場で、他社から間違いメールが届いたときの動きは間違いメールを受け取ったときの返信の例文にまとめました。受け取る側の決まりも一緒に配ると、社員が迷いません。
効いているかはどう見る?
誤送信の件数だけで見ると、報告が減っただけなのか、本当に減ったのか区別できません。次の2つを月に1回見てください。
- 送信前に気づいて止めた件数
- 送ってから気づいた件数と、種類の内訳
止めた件数が報告されるようになると、どこで間違えやすいかが分かります。社員に小さな間違いも話してもらうには、報告しやすい社内の決まりを先に決めておく必要があります。送信前の確認を守らせる話だけを続けると、間違いは見えなくなります。
種類の内訳が分かれば、次に足す対策も絞れます。宛先の間違いが多いなら候補の扱いを、一斉送信の間違いが多いなら送信の方法を見直します。ツールを比べるのは、そのあとで十分です。