プレスリリースでAI検索に引用されうるのは、事実が1文で書かれた部分です。誰に向けた何か、いつから、どこで、数字とその出どころ。こうした文は、検索した人の問いへの答えになり、記事を書く記者や比較サイトの担当者も書き写せます。「画期的な」「業界をリードする」といった宣伝文句は、どの問いへの答えにもならないので、材料になりにくいと私たちは考えています。
ただし、プレスリリースを出せばAIに引用される、という公式の説明はありません。私たち自身も、リリースの効果を測った数字はまだ持っていません。この記事は、引用されるとしたら何が材料になるか、という観点で書いています。
プレスリリースには何を書けばいい?
- 最初の1文で、誰が・何を・いつから始めるかを書く
- 誰に向けたものか、誰には向かないかを書く
- 数字には単位・時点・出どころを添える
- 条件や制限(対応地域、数量、期間)を書く
- 詳しい情報がある自社サイトのページのURLを1つ書く
- 問い合わせ先には、会社の窓口を書く
AIの答えは、複数のページから必要な部分を取り出して作られます。GoogleはAI機能についてのページで、1つの質問を関連する複数の検索に分けて調べ、幅広いリンクを答えと一緒に示すと説明しています。リリースのどの1文が取り出されても意味が通るように書くのが、1から6の狙いです。
書き換えの例
ある金属加工の会社が、新しく試作の受付を始めるときのリリースを想定します(書き方を示すための例です)。
よくある書き出しはこうです。
株式会社〇〇は、長年培ってきた高度な技術力を活かし、お客様の多様なニーズにお応えする画期的な試作サービスを開始いたしました。業界初のスピード対応で、ものづくりの未来に貢献してまいります。
読み終えても、何がいつから、誰向けに、どれくらいの速さで始まったのかが分かりません。「業界初」には根拠もありません。事実を先に書くと、こうなります。
株式会社〇〇(〇〇県〇〇市)は、2026年11月1日から、アルミとステンレスの切削部品の試作受付を始めます。対象は、量産を前提に1〜20個の試作を必要とする装置メーカーの設計部門です。図面を受け取ってから3営業日以内に見積もりを返します(2026年10月時点の体制)。詳しい対応範囲は https://(自社のサービスページ) に載せています。
この形なら、「アルミ 試作 切削 見積もり 早い」と調べた設計者への答えとして、どの文を取り出しても使えます。「量産を前提に」という条件も、最初から文に入っているので、要約で落ちにくくなります。条件が落ちて会社の説明がずれる話は、AIは自社サイトの外も読んでいるで書きました。
「誰に向けたものか」を書く理由
リリースで見落とされやすいのが、対象の範囲です。「どなたでもお気軽に」と書くと、誰にとっても自分ごとになりません。AIが「〇〇に向いた会社は」と聞かれたときに材料にできるのも、対象がはっきり書かれた文です。
製造業なら、業種(装置メーカー、自動車部品)、部署(設計、購買)、数量(試作、小ロット、量産)、地域の4つのうち、当てはまるものを書きます。向かない相手も書いておくと、紹介する側が誤って「〜向け」と書く余地が減ります。
先ほどの試作の例なら、「1個だけの単品製作や、量産の予定が無い試作はお受けしていません」と1文足します。断る相手を書くのは勇気が要りますが、合わない問い合わせに毎回電話で説明する手間を考えれば、書いておくほうが早く済みます。
数字の書き方
数字を載せるときは、何を・いつ・どう測った値かを一緒に書きます。
| 書き方 |
扱い |
理由 |
| 「見積もりは3営業日以内(2026年10月時点の体制)」 |
使える |
何の数字で、いつの話かが分かる |
| 「当社調べで満足度98%」 |
そのままでは使えない |
対象・人数・期間・質問の仕方が無い |
| 「業界No.1」「業界初」 |
根拠が無ければ書かない |
確かめようがない。法律でも根拠を問われる |
| 「市場規模は〇億円」 |
出典のURLを書けるときだけ |
出どころが無い数字は、読む人が判断できない |
自社で調べた数字を出すなら、同じ段落に「2026年9月に、取引先の設計担当者〇名に聞いた」のように、対象・人数・期間を書きます。
「No.1」や「業界初」のような表示は、景品表示法の上でも根拠が問われます。消費者庁は、表示が優良誤認にあたるかを判断するために、裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます(不実証広告規制)。根拠を出せない言葉は、最初から入れません。
新製品のリリースで書く項目
新しい製品や設備を発表するときは、決まった項目を表の形で末尾に付けておくと、記者や比較サイトの担当者が書き写しやすくなります。
| 項目 |
書き方の例 |
| 製品名・型番 |
製品名と型番を、自社サイトの表記と同じに |
| 何をするものか |
1文で。「〇〇の工程で、〇〇を自動で測る装置」 |
| 対象 |
業種、工程、数量の範囲 |
| 主な仕様 |
寸法、精度、対応材質。単位と測定条件を付ける |
| 発売日・受付開始日 |
年月日 |
| 価格の決まり方 |
定価があれば税込・税抜を明記。見積もりならその旨 |
| 詳しい情報 |
自社サイトの製品ページのURL |
| 問い合わせ先 |
会社の窓口 |
本文で書いたことを、表で繰り返す形になります。それでかまいません。本文は読む人のため、表は書き写す人のためのものです。仕様の数字は、自社サイトの製品ページと完全に同じにします。リリースと製品ページで数字が違えば、どちらが正しいのか誰にも分からなくなります。
リンクを得るための配信はしない
プレスリリースを配信サービスに出すと、たくさんのサイトに転載されます。そのリンクで検索順位を上げようとするのはやめてください。Googleのスパムに関するポリシーは、リンクスパムの例として、他のサイトで配信される記事やゲスト投稿、プレスリリースの中の、最適化したアンカーテキストのリンクを挙げています。
リリースの中のリンクは、詳しい情報への案内として1つ入れれば十分です。アンカーテキストに狙った検索語を詰め込むことはしません。リリースで狙うのは、リンクではなく、正確な事実が業界メディアや比較サイトに載ることです。
配信する前と後にやること
配信の前に、同じ内容を自社サイトのお知らせやサービスのページに載せておきます。転載先がいくつあっても、正本は自社サイトです。AIや記者が確かめに来たときに、そこに同じ事実が書いてあれば、転載先で一部が欠けても正しい情報にたどり着けます。
リリースの社名の表記は、自社サイト、SNS、Googleビジネスプロフィールと同じにします。転載先が多いぶん、表記がずれると、ずれた表記が一気に広がります。そろえ方は社名と紹介文をどこでも同じにするで説明しています。
配信の後は、社名で検索して、どこにどう転載されたか、業界メディアにどう書かれたかを記録します。記事に事実の誤りがあれば、根拠を添えて訂正を頼みます。頼み方は比較サイトや紹介記事に正しい情報を載せてもらう頼み方にまとめています。AI検索での見え方の変化は、同じ質問を月に1回聞いて記録するAIでの推薦を記録する星取り表で追います。
効果はどう確かめるか
プレスリリースがAIの答えに使われたかを、直接数える方法は今のところありません。私たちが勧めているのは、リリースの前後で次の3つを比べることです。
- Search Console で、社名や製品名を含む検索の表示回数とクリック
- Search Console の生成AI機能のパフォーマンスレポートで、リリースで案内した製品ページの、AI Overviews と AIモードでの表示回数
- 問い合わせフォームの「知ったきっかけ」で、「ニュース記事」「AIに聞いた」を選んだ件数
どれも、リリースだけの効果を切り分けられる数字ではありません。展示会や営業の動きと重なれば、どれが効いたかは分からなくなります。それでも、配信日を記録しておけば、前後の変化は見られます。数字の見方はAI経由の効果の見方:知ったきっかけと社名検索にまとめています。
記事広告として出す場合
掲載料を払って、メディアにリリースを記事として載せてもらう場合は、広告であることが分かる表示が付く前提で依頼します。2023年10月1日から、広告であるのに広告であることを隠した表示は、景品表示法のステルスマーケティング規制の対象です。媒体が自分の判断で取材して書いた記事とは扱いが違います。
リリースの1文1文を、問いへの答えとして書く。その書き方は自社サイトの記事と同じで、AIに引用される文章の書き方で詳しく説明しています。SNS・PRの全体像はSNS・PRのカテゴリにまとめています。