AIセキュリティ企業を比べるときは、社名の順位を見る前に、社員の利用と自社のAIアプリのどちらを守るのかを決め、同じ確認項目で候補を並べます。守る対象が違う製品は、機能の数を比べても意味がないからです。
今日は紙1枚に3つ書いてください。社内で使っているAIサービス、自社で作ったり社外に公開したりしているAIの有無、製品が入ったときに画面を見る人の名前です。この3つで、見るべき種類の大半が絞れます。
なぜ順位で選べないのか
「AIセキュリティ企業」と検索すると、会社名を並べた記事が多く見つかります。ただ、並んでいる会社の守る対象はそろっていません。社員のブラウザ利用を見る製品と、自社のAIアプリの手前に置く製品は、そもそも置く場所も買う部署も違います。
順位の根拠も確かめにくいところです。売上や導入社数が書かれていても、出典や対象の範囲が示されていなければ、自社に合うかの判断には使えません。私たちはセキュリティ製品の開発会社ではなく、製品を試して順位を付ける立場にもありません。この記事では公式ページで確かめられる範囲で、見方だけを示します。
製品の種類は4つに分けられる
守る相手で分けると、次の4つになります。
ここに挙げたのは種類を説明するための例で、優劣を示すものではありません。各社の製品を同じ項目で並べた表は、AIセキュリティ製品の比較にあります。
種類の決め方は単純です。社員が外部のAIを業務に使っているなら、利用管理型から見ます。顧客が触るチャットや、社内データを読むAIを自社で作るなら、アプリ防御型が候補に入ります。どちらもあり、管理の画面をまとめたいなら、両方を扱う型です。専任の担当を置けないなら、監視サービス型も並べます。
たとえば部品メーカーで、営業と設計が文章作成にAIを使うだけなら、対象は社員の利用です。この会社が取引先向けに、仕様を問い合わせるチャットを公開するなら、外部の人が入力するAIが増えるので、アプリ防御の話が加わります。同じ会社でも、AIの使い方が変われば比べる相手が変わります。
専用製品の前に確かめること
全社で専用製品が要るとは限りません。IPAの情報セキュリティ10大脅威 2026の解説書が挙げる対策には、サービスの利用規定の整備、個人アカウントでの業務利用の制限、学習対象からの除外設定、約款の確認があります。製品なしで始められるものが多くあります。
利用状況が分からない段階で製品を探すと、提案の良し悪しを判断できません。シャドーAIの調べ方と許可の出し方で社内の実態を先に確かめると、必要な機能の条件が具体的になります。
すでに入れている製品で足りる場合もあります。Microsoft 365を使っている会社なら、Microsoft Purviewが案内するCopilotや他の生成AIアプリのデータ保護を確かめておくと、重複した投資を避けやすくなります。CASBやDLPを持っている会社は、DLPの製品比較で機能の範囲を見直してから、差分を考えます。
頼む前に確かめる6つの項目
候補が決まったら、各社に同じ質問をします。答えが資料のどこに書かれているかも聞いてください。
1. どのAIが見えるのか
Palo Alto Networksは対応する生成AIアプリの数を2,500以上と案内しています。こうした数字は、自社で使うサービスが含まれるかを確かめるために使います。社内の一覧を渡して、対応の有無を答えてもらうのが確実です。
2. 検知するだけか、その場で止めるのか
動きは製品ごとに違います。Zscalerは、プロンプトの可視化や、DLPのブロックポリシーで機密データを守ることを案内しています。NRIセキュアのAI Blue Teamは、有害な入出力を検知した場合に導入企業の担当者へ通知するサービスと説明しています。
どちらが優れているという話ではありません。通知を受けて誰が動くのかまで決めて、自社に合うほうを選びます。誤って止めたときに、現場がどう解除を頼むのかも聞いてください。
3. データはどこを通るのか
製品自体も、AIへの入出力を預かることがあります。AI Blue Teamは現時点でSaaSのみの提供で、入出力の情報をインターネット経由で検知APIへ送る形です。F5 AI Guardrailsは、オンプレミスや完全にエアギャップされた環境でも機能を利用できると案内しています。
製造業で図面や取引先の情報を扱うなら、ここは必ず確かめてください。製品の提供会社に渡る情報と、その保存期間、取引先との秘密保持契約との関係です。
4. 導入に何が要るのか
端末への組み込み、通信経路の変更、開発作業の有無を聞きます。社内にネットワークの担当者がいなければ、保守会社の作業費も含めて考えます。工場の端末や、社外で使うノートPCが対象に入るかも確かめてください。
5. 誰が画面を見るのか
通知の宛先に誰も張り付けないと、製品は動いていないのと同じです。自社運用なのか、提供会社のアナリストが見るのかを確かめます。AI Blue Teamは、NRIセキュアのアナリストが検知結果から攻撃傾向を分析し、対応を更新すると案内しています。範囲がどこまでかは、契約前に書面で確かめてください。
6. 価格はどの条件で変わるのか
AI Blue Teamは個別見積もりで、対象システム数、ユーザ数、検知APIの呼び出し回数などで変わると案内しています。比べるときは、社員数、対象システム、想定の利用量をそろえて各社に渡します。
「完全に防ぐ」と言われたら
プロンプトインジェクションの防御をうたう製品を見るときは、説明の仕方も判断材料になります。IPAの解説書は、AIが不正なプロンプトを見分けることについて、技術的対策で完璧なものは知られていないとしています。OWASPも確実な防止方法があるかは不明とし、権限を必要最小限に絞る、影響の大きい操作に人の承認を挟むといった対策を挙げています。
検査製品は重要な層の1つですが、設計の代わりにはなりません。「検知を抜けたときに、被害をどう小さくするか」を聞いて、答えが返ってくるかを見てください。どんな報告があるのかは、プロンプトインジェクションの公表された事例で整理しました。
製品でなく人に頼むときの確かめ方
規程作りや、AI利用の全体の設計から手伝ってほしいなら、製品会社ではなくコンサルティング会社が相手になります。何を仕上げたいかで会社の得意分野が違うため、セキュリティコンサルの比較で種類を見てから相談します。
公的な一覧も、候補を探す入口になります。IPAの情報セキュリティサービス基準適合サービスリストには、基準への適合を審査されたサービスが、監査や脆弱性診断などに分かれて載っています。IPA自身は、掲載が保証を意味しないと明記しています。AIの専門性を示す一覧でもないので、AIの実務経験は別に聞いてください。
中小企業向けには、IPAのサイバーセキュリティお助け隊サービスの登録一覧もあります。制度の案内によると、中小企業のサイバー攻撃への対処に要るサービスを1つにまとめた、民間のサービスです。AI専用ではないので、社内全体を見てほしいときの候補として見ます。
AI全体の考え方はAIセキュリティの記事一覧から確かめられます。相談の前に、社内のAI一覧、入れている情報、AIがつながる社内データ、担当者の有無をまとめておきます。この4つを各社に同じ形で渡すと、提案の違いがそのまま比べられます。