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COLUMN 1187 / 監視・運用・社内体制

インシデント対応フローの作り方は?図にして社内に配るときの要点を解説

公開 2026.11.06文・ナギサコーポレーション

この記事の答え

  • 見つけた人、責任者、経営者の順に連絡の線を引く
  • 箱ごとに、決める人、決める内容、連絡先を書く
  • 社内の仕組みが止まっても見られるよう、紙でも配る
目次

インシデント対応フローは、見つけた人から責任者、経営者へ連絡が届く順番を1枚⁠に書き、箱ごとに「誰が、何を決めるか」⁠と連絡先を入れて作ります。インシデント対応フローとは、情報漏えいやウイルス感染、システム停止が起きたときの動きを順番に示した手順のことです。

今日やることは、この記事の表の「誰が」⁠と「連絡先」⁠を埋めることです。埋まらなかった欄が、会社としてまだ決まっていないことです。詳しい手順書より先に、その欄を埋めてください。

なぜ1枚⁠の図にするのか?

起きてから手順書を探す余裕はないからです。IPAのガイドライン第4.0⁠版は、判断と初動の遅れで被害が広がるのを避けるため、対象の範囲と判定基準、上へ報告するルールを決めて従業員に周知するよう求めています。

警察庁の令和8年上半期の報告⁠によると、ランサムウェアの被害組織のうち、復旧に1か月未満だった割合は5割弱にとどまります。復旧に総額1,000万円以上かかった組織は全体の6割です。図を作れば被害が減ると言い切ることはできませんが、最初の数時間に迷う要素は減らせます。

全員が覚える内容は多くありません。見つけた人が知るべきなのは、「触らずに、誰へ連絡するか」だけです。

フローには何を書くのか?

土台には、IPAの中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き⁠の3段階が使えます。次の表は、手引きの内容を、配る図の箱に置き換えたものです。「連絡先」⁠の列は自社で埋めます。

段階 誰が 何をする、何を決める 連絡先
発見 見つけた人 操作を止めて報告。外からの通報は相手の連絡先を控える 責任者(代わり)
判断 情報セキュリティ責任者 対応すべき事案か判断し、経営者へ報告 経営者(代わり)
体制 経営者 体制を立ち上げ、責任者と担当者を決める 保守会社、委託先
初動 責任者の指示で担当者 切り離し、隔離、停止。記録を消す操作は避ける 保守会社、相談窓口
報告 経営者と責任者 取引先、顧客、届出先への連絡と公表を決める 取引先、届出先
復旧 責任者と外部の専門家 原因を調べ、修復後に再開。経営者へ結果を報告 調査会社

手引きは、起きたことの整理項目も挙げています。分類、責任者、発覚日時、発生日時、発生事象、対応の経過、想定される原因、被害を受けたシステムの状況です。この項目を裏面にして、書き込めるようにしておくと、報告の下書きになります。

判断の基準を短く決める

すべてを同じ重さで扱うと、責任者が動けなくなります。次の3段階は、私たちが例として整理したものです。自社の事業に合わせて書き換えます。

区分 例 動き
すぐ経営者へ 身代金を求める画面、顧客情報の流出の疑い、取引先からの通報 時間を問わず電話
当日中に責任者へ 不審なメールを開いた、ウイルス対策ソフトの警告 電話か口頭
記録して共有 不審なメールが届いたが開いていない 担当者へ連絡

原因が分からない停止も、上の区分に入れます。手引きは、原因が不明な場合はセキュリティの問題の可能性も含めて対応するよう示しています。「故障だと思って様子を見る」⁠が続かないようにするためです。

図に落とすときの要点は何か?

配る図に入れるもの

  • 上から下へ1本⁠の流れ。分岐は「緊急か」⁠の1つまで
  • 名前と電話番号。役職だけだと、夜に誰へかけるのか迷う
  • 全員あての3行:止める、触らない、電話する
  • 版の日付。異動や保守会社の変更で古くなるため

個人の電話番号を社内の壁に貼るのに抵抗があれば、掲示用には役職と内線、緊急の番号は配布された紙やカードにする、と分けます。誰の目に触れる紙なのかを決めてから書きます。

紙でも配るのは、ランサムウェアや機器の停止で社内の共有ファイルやメールが使えなくなる場面を考えるからです。スマートフォンの写真でも持っておきます。

切り離しの書き方に注意する

現場の人に伝える言葉は、とくに慎重に選びます。手引きによると、ウイルスやランサムウェアの感染では、機器の利用を止めてネットワークから切り離します。一方で、電源を切るなどの不用意な操作で記録を消さないよう注意しています。

配る図には「LANケーブルを抜く。電源は切らない。分からなければ触らず電話」のように、自社の機器に合わせて具体的に書きます。Wi-Fiの機器や工場の設備では方法が違うので、保守会社に確かめてから書きます。

製造業の工場ではどこを書き足すか?

たとえば、部品メーカーの工場で、夜勤の時間に生産管理端末へ身代金を求める画面が出た場合です。見つけるのは現場の班長で、責任者は自宅にいるかもしれません。

このとき、事務所向けのフローだけでは足りない箇所が3つあります。

  1. 夜勤の班長が電話する相手と、つながらないときの次の相手
  2. ラインを止める判断を誰がするのか。セキュリティの責任者と工場長のどちらなのかを書く
  3. 納期に影響が出るときに、取引先へ誰が連絡するのか

図面や仕様を預かっている会社なら、発注元への連絡も書き込みます。ガイドライン第4.0版は、取引先との間でインシデント発生時の通知義務や連絡先を文書にし、役割分担を合意して訓練で確かめるよう求めています。契約書に連絡の期限が書かれていないか、この機会に見ておきます。

外部の連絡先はどこを書くのか?

手引きの相談窓口と報告先から、中小企業が図の余白に入れておきたいものをまとめます。

用件 先
技術的な相談 IPA 企業組織向けサイバーセキュリティ相談窓口
犯罪の相談、通報 警察庁の窓口と都道府県警察
インシデントの対応依頼 JPCERT/CC
ウイルス、不正アクセスの届出 IPAの届出窓口
個人情報の漏えいの報告 個人情報保護委員会
有償の緊急対応 JNSAの緊急対応企業一覧

個人情報については、個人情報保護委員会のページが、速報は発覚から3〜5日以内⁠、確報は30日以内⁠、不正の目的のおそれがある場合は60日以内としています。自社の事案が報告の対象に当たるかは、同じページで確かめます。経理や顧客台帳の担当者にも、この日数を伝えておきます。

調査を頼む会社は、起きてから探すと比べる余裕がありません。JNSAの一覧には初期相談が無料の会社もあると書かれています。平時にインシデント対応・フォレンジックの比較で対応時間と費用の形を見て、候補を図に書いておきます。

平時の相談相手を持っているなら、その電話番号も書きます。セキュリティ運用代行・顧問サービスの比較にある顧問や、お助け隊サービスの窓口がこの枠に入ります。誰を担当に立てるかが決まらない会社は、採用せずに役割を回す組み立てから始めます。

配ったあとにやることは何か?

配って終わりにすると、半年で古くなります。

  • 版の日付を決め、人事異動や保守会社の変更のたびに直す
  • 年に1回⁠、10分⁠でよいので口頭で回す。「夜勤中に画面が変わった。誰に電話しますか⁠」⁠と聞くだけでも、番号の間違いが見つかる
  • バックアップから戻す手順を確かめる。ガイドラインは、目標復旧時間と目標復旧時点に合わせた手順の整備と、訓練での検証を求めている

原因を調べるにはログが要ります。手引きも、調査の対象にサーバーやネットワーク機器のログを挙げています。今どれだけ残っているのかを確かめ、足りなければ統合ログ管理ツールの比較を見ます。既存の監視の道具で通知を増やす場合の範囲は、Zabbixでできるログ監視の範囲⁠で分けました。運用全体の話はセキュリティの運用と体制⁠にまとめています。

図を作る中で最も価値があるのは、完成した紙より、経営者と責任者が「ラインは誰が止めるのか」⁠を一度話し合うことです。その答えを書き留めた紙が、社内で使えるフローになります。

よくある質問

インシデント対応フローとは何ですか?

情報漏えいやウイルス感染、システム停止が起きたとき、誰が誰に連絡し、何を決めるかを順番に示した手順です。IPAの手引きは、検知・初動対応、報告・公表、復旧・再発防止の3段階に分けています。

インシデント対応フローには何を書けばいいですか?

最初の連絡先と不在時の代わり、責任者と経営者の判断の範囲、機器を切り離すときの注意、外部の相談先と届出先です。詳しい手順は別紙にし、配る図は1枚⁠に収めます。

ウイルスに感染したら最初に誰へ連絡しますか?

決めておいた情報セキュリティの責任者です。IPAの手引きは、感染した機器の利用を止めてネットワークから切り離すよう示しています。電源を切るなど、記録を消す操作は避けます。

インシデントが起きたらどこに報告が必要ですか?

内容で変わります。IPAの手引きでは、個人情報の漏えいは個人情報保護委員会、犯罪性があれば警察、ウイルスや不正アクセスはIPAの窓口です。取引先への連絡は契約も確かめます。

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