SOC(ソック)とは、ネットワーク機器やサーバーのログを常時監視・分析し、攻撃の兆候を見つけて対応につなげる組織や機能のことです。Security Operation Centerの略で、社内に作る会社も、外部のサービスに任せる会社もあります。
今日やることは、「この会社で夜中に警告が出たら、誰の電話が鳴るのか」を答えられるか確かめることです。答えが出なければ、製品や外注先を比べる前に、通知を受ける人と、機器を止める判断をする人を決めます。外注しても、この2人は社内に要るからです。
SOCは何をしているのか?
英国の国家サイバーセキュリティセンターは、SOCの構築指針で役割をこう説明しています。予防の対策をすり抜けた攻撃を検知し、対応することで、組織の被害を抑える。防ぐための製品とは別に、防げなかった場合に備える役割です。
同じ指針は、SOCの範囲は組織によって大きく違い、どの組織にも合う形はないとも書いています。「SOCを入れる」と言っても、中身は一つに決まりません。外注のときに確認が要るのはこのためです。
国内では、セキュリティ運用の事業者が集まるISOG-Jが、SOC・CSIRTの解説書(2017年)で機能を9つに整理しています。この記事に関係が深いのは次の4つです。
| 機能 |
やること |
| リアルタイムアナリシス(即時分析) |
機器やセキュリティ製品のログを常時監視し、分析する |
| ディープアナリシス(深掘分析) |
被害を受けたシステムや、漏えいしたデータを調べる |
| インシデント対応 |
被害の広がりを抑え、関係者と調整する |
| システム運用・開発 |
製品やログの収集基盤を管理し、改善する |
一般にSOCと聞いて思い浮かべるのは、上の表の1行目です。同じ解説書は、平時の分析運用を行う組織をSOC、有事の対応を行う組織をCSIRTと呼ぶことが多いとしています。呼び方は会社によって違うので、名前より「どの機能を誰が担うか」で考えると話が早くなります。事故が起きたときの流れはインシデント対応の手順で説明しています。
なぜ中小企業は自社に作らなくてよいのか?
理由は単純で、24時間の監視には人数が要り、兼任では回らないからです。夜間も休日も警告を見て判断する体制を、社内の数人で組むのは現実的ではありません。
ISOG-Jの解説書も、一つの組織内に全ての機能を持つ必要はないとしています。社内に専門知識がほとんどなく、総務部門などが中心になる会社は、外部の専門組織に大きく頼る形になると説明しています。必要な役割が回るならアウトソースの比率が高くても問題はなく、無理に内製の比率を上げて実態が伴わないほうが問題だ、とも書いています。
監視を持つ意味はどこにあるのか
警察庁の令和8年上半期の報告によると、ランサムウェアの被害報告は123件でした。被害企業の規模別では中小企業が約6割、業種別では製造業が約3割です。同じ報告は、侵入経路はVPN機器が約5割を占めるとしています。また、攻撃者は暗号化の前に内部を探索し、重要データやバックアップを物色すると説明しています。
侵入と暗号化の間に時間があるなら、その間に異常に気づける可能性があります。ただし、監視を入れれば必ず止められるという話ではありません。気づいたときに動く人がいて、初めて意味があります。
外注する前に、何を確かめるのか?
ここからは私たちの整理です。お見積もりの比較に入る前に、次の6点を各社に同じ形で聞くと、違いが見えます。
外注先に聞く6点
- 何を監視するのか(出口の通信、端末、サーバー、クラウド、工場のネットワーク)
- どの時間帯に、どの条件で、どの手段で知らせるのか
- 通知のあと、遮断や隔離までしてくれるのか、助言までなのか
- ログをどこに、どのくらいの期間残すのか
- 事故のとき、調査や駆け付けは契約の範囲に入るのか
- 誤検知の判定と、検知の調整を誰が行うのか
監視の範囲を、自社の機器と突き合わせる
「24時間監視」と書いてあっても、対象が出口の装置だけなのか、端末の中まで見るのかで、見えるものが変わります。端末を見るEDRの監視と、ネットワークを見る監視は別のものです。ネットワーク側の違いはネットワーク監視の始め方で扱っています。機器の一覧を手元に用意して聞くと、「その機器は対象外です」という答えを先に引き出せます。
通知の基準を、数字で聞く
IPAのサイバーセキュリティお助け隊サービス基準(2.1版)は、比較の物差しとして使えます。1類では、重大なインシデントは即時(60分以内を目標)に通知し、防御機能で十分に対策できたものや対応が不要なアラートは週1回などのレポートで知らせると定めています。
お助け隊以外のサービスを比べるときも、同じ問いをぶつけられます。何分以内に、誰に、電話かメールか。ここが曖昧なまま契約すると、夜中の通知が翌朝のメールだったということが起こりえます。
遮断の権限を、契約の前に決める
外注先が自分の判断で機器を切り離せる契約なら、対応は速くなります。代わりに、業務が止まる可能性を社内で受け入れる必要があります。助言までの契約なら、切り離すのは社内の人です。どちらが正しいかは会社によって違うので、決めておくことに意味があります。
費用の目安をどこに置くか
中小企業が比べやすい入口は、お助け隊サービスです。基準の2.1版は、相談窓口、異常の監視、緊急時の対応支援、簡易サイバー保険を原則として一つの契約で提供することを求めています。価格の上限も決まっています。
| 区分 |
一時費用の上限 |
月額の上限 |
| ネットワーク監視 |
50万円 |
1万円 |
| 端末監視 |
50万円(端末数によらない) |
1台あたり2,000円 |
いずれも税抜きで、1類の基準です。実際の内容は、IPAの監視種別サービス一覧で事業者ごとに確かめられます。
もう少し手厚い監視を探すなら、IPAの情報セキュリティサービス基準適合サービスリストに「セキュリティ監視・運用サービス」の区分があります。民間のサービスはMDR・SOC監視サービスの比較、顧問の形で運用ごと頼む場合はセキュリティ運用代行・顧問サービスの比較で確かめられます。
製造業なら、どこでつまずきやすいか?
たとえば、夜勤のある部品メーカーが、事務所のネットワークの監視を外注した場合を考えます。深夜に「社内のパソコンから不審な通信がある」と通知が来たとき、そのパソコンが生産設備のデータを集める役割も持っていたら、切り離すとラインに影響が出るかもしれません。
事務所の担当者はそのパソコンの役割を知らず、夜勤の班長はセキュリティの判断ができない。こうした場面を想定して、外注先に渡す機器の一覧には「止めると何が止まるか」を1列足しておきます。夜間に判断する人の連絡先も、工場側と事務所側でそろえておきます。
工場のネットワークまで監視に入れるかは、別の検討になります。経産省の工場システムのセキュリティ対策ガイドラインは、工場のネットワーク対策の一つに通信状況の可視化と監視を挙げています。あわせて、示した内容は例であり、環境は個社ごとに違うとしています。事務所から始めて、工場はあとから範囲を決める順番でも構いません。
社内に残すものは何か?
外注しても、社内に残るのは次の3つです。
1つ目は、通知を受ける窓口です。夜間と休日の連絡先を、担当者1人に集中させないようにします。
2つ目は、止める判断です。売上と納期に関わるので、社長か、社長が決めた代理の人が持ちます。
3つ目は、ログの置き場所の把握です。警察庁の令和7年の報告は、ログを侵害範囲の特定に不可欠なものと書いています。外注先が持つログと自社が持つログのどちらに何が入るかを、一覧にしておきます。
ログを1か所に集めて分析する仕組みはSIEMと呼ばれ、外注のSOCがサービスに含めることもあります。自社で持つ場合の製品はSIEMの比較で確かめられます。SIEMのあとに検討される自動化については、SOARを急がなくてよい会社の基準に書きました。
取引先から対策の説明を求められる会社は、SCS評価制度の動きも見ておくと役立ちます。★3・★4は2027年3月の受付開始に向けて整備が進められています。
監視や運用の全体像は、監視・運用・社内体制のカテゴリにまとめています。