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COLUMN 1118 / サイバー攻撃の基本と最新動向

マルウェアとウイルスの違いは?社内で言葉をそろえるための短い整理

公開 2026.11.06文・ナギサコーポレーション

この記事の答え

  • マルウェアは総称で、ウイルスはその一種
  • ウイルスを広い意味で使う公的資料もあり、誤用とは言い切れない
  • 社内の報告はマルウェアにそろえ、種類がわかれば名前を足す
目次

マルウェアは悪意のあるソフトウェアの総称で、ウイルスはその一種です。

今日やることは、社内の報告で使う言葉を決めることです。私たちの案は、種類がわからない段階では「マルウェア感染の疑い」⁠と書き、種類がわかったらランサムウェアなどの名前を足す形です。この記事の後半に、そのまま社内に回せる短い決まりを載せました。

全体はセキュリティの基本のカテゴリから見られます。

言葉の定義はどう違うのか?

総務省の用語集は、マルウェアをMalicious Software(悪意のあるソフトウェア)⁠の略で、攻撃をするソフトウェアの総称と説明しています。コンピュータウイルスと同じ意味で使われるものの、厳密にはさらに広い用語で、ウイルス、ワーム、スパイウェア、ボット、トロイの木馬などの種類があるとしています。

狭い意味のウイルスは、増え方で定義されます。米国国立標準技術研究所(NIST)⁠の用語集では、ほかのプログラムを変更して自分の複製を含ませることで広がり、感染したプログラムが実行されると動くものです。

代表的な種類を短く並べます。

名前 特徴 確かめた資料
ウイルス ほかのプログラムに自分の複製を組み込んで広がる NIST
ワーム それ単体で動き、システムやネットワークを通じて広がる NIST
トロイの木馬 役に立つように見せて、悪意のある機能を隠し持つ NIST
ランサムウェア データを暗号化し、復号の対価を要求する 警察庁

種類は重なることがあります。この表は分類の試験のためではなく、「ウイルスはマルウェアの中の1つ⁠」⁠とわかれば足ります。

ウイルスと呼ぶのは間違いなのか?

間違いとは言い切れません。公的な資料でも、呼び方はそろっていないからです。

  • 総務省のサイト⁠は「マルウェア(ウイルス等)」⁠と併記し、ボット、ランサムウェア、スパイウェア、トロイの木馬などをまとめて「広義のウイルス」⁠と呼ぶこともあると説明しています
  • IPAの情報セキュリティ6か条⁠は「ウイルス対策」「ウイルス対策ソフト」という言葉を使っています
  • 同じEmotetを、IPAは「ウイルス」と説明し、JPCERT/CCは「マルウェア」⁠と呼んでいます
  • 法律の分野では、法務省の資料が刑法の不正指令電磁的記録に関する罪を「いわゆるコンピュータ・ウイルスに関する罪」⁠と⁠し⁠て⁠い⁠ま⁠す

日常の会話で「ウイルス」⁠と言う人を直す必要はありません。問題になるのは、言葉のずれで報告の中身があいまいになるときです。

言葉がずれると、社内で何が困るのか?

困るのは、受け取る側が状況を読み違えることです。

たとえば、工場の検査装置につないだパソコンで、セキュリティソフトの警告が出たとします。現場から「ウイルスが出ました」とだけ連絡が来ると、担当者には次のことがわかりません。

  • ソフトが検知して処理を終えたのか、感染して動いている疑いがあるのか
  • 画面に出た名前は何か
  • その装置は止めたのか、動かしたままか

反対に、総務部が取引先への連絡で「ランサムウェア」⁠と書いたのに、調べたら別の種類だったという場合は、訂正が必要になります。種類が確定する前に名前を断定しないほうが、後で困りません。

「検知」⁠と「感染」⁠も別の言葉です。検知はソフトが見つけたこと、感染は実際に入り込んだことを指す、と社内で決めておくと、報告を受けた人が次の動きを判断しやすくなります。検知が無いことは、感染していないことの証明にはなりません。この点は、EmoCheckの記事でも実例として扱います。

社内の報告では、どうそろえるのか?

次の決まりを、そのまま使えます。私たちの提案であり、公的な基準ではありません。

社内の用語の決まり

  • 総称は「マルウェア」⁠と⁠書⁠く
  • 種類がわかったときだけ「ランサムウェア」「ワーム」⁠な⁠ど⁠と⁠書⁠く
  • 確定前は「疑い」⁠と添える
  • 「検知」⁠と「感染」⁠を分ける
  • 製品名や制度の名前は、「ウイルス対策ソフト」のように元の呼び名のまま書く

報告の中身は、IPAのセキュリティインシデント対応の手引き⁠が示す5W1Hの整理に合わせると、書く順番に迷いません。手引きには、不用意に電源を切るなどして記録を消さないようにする注意もあります。社内では次の5行⁠にまとめます。

件名:マルウェア感染の疑い(検知/感染の別:検知)
機器:どの部署の、どの機器か
時刻:いつ気づいたか
表示:画面に出た製品名と名前(写真を添付)
対応:自分がしたこと、していないこと

種類の判断を、最初に気づいた人に求めないでください。現場の人は、見たものをそのまま伝えれば十分です。言葉が正しいかを気にして連絡が遅れるほうが、言葉のずれより大きな問題になります。「こんな言い方で報告していいのか⁠」⁠と迷わせないよう、決まりと同時に、連絡先を1か所に決めて伝えてください。判断は、担当者や保守会社、必要に応じてIPAの相談窓口⁠と一緒に行います。

この決まりは、教育の場で1回説明すれば足ります。研修の教材を外部に任せるなら、セキュリティ教育サービスの比較があります。

現場の言い方は、どう書き換えるのか?

現場の言葉を禁止する必要はありません。受け取った担当者が、報告の形に書き直せば足ります。次の表は、そのときの例です。

現場の言い方 報告の書き方 確かめること
ウイルスが出た マルウェア検知。感染の有無は未確認 ソフトが処理を終えたか
変なメールを開いた 不審なメールの添付を開いた。マルウェア感染の疑いを確認中 開いたファイル、画面の表示
ランサムにやられた ファイルが開けず、脅迫文が表示された。ランサムウェア感染の疑い 範囲、バックアップの状態
乗っ取られた アカウントの不正利用の疑い。マルウェアとは限らない ログイン履歴、パスワード

最後の行のように、すべての事故がマルウェアの話とは限りません。IPAの10大脅威2026の解説書は、攻撃者がマルウェアだけでなくOS標準のコマンドも用いて情報を盗むと説明しています。警察庁の令和8年上半期の報告書でも、ランサムウェアの侵入経路の約5割⁠はVPN機器で、未修正の脆弱性や漏えいした認証情報が悪用されるとされています。

「ウイルスは見つかりませんでした」は、攻撃が無かったという意味にはなりません。報告書では「マルウェアは検知されなかった」⁠と⁠、見た範囲がわかる形で書きます。

社外へ伝えるときも同じ言葉でいいのか?

社内で決めた言葉を土台にして、相手に合わせて補います。取引先には、専門用語よりも「どの情報やサービスに影響があるか⁠」⁠が必要です。「マルウェア感染の疑いがある端末を1台確認し、調査中です」のように、確定した事実と調査中のことを分けて伝えます。

届出の先は、事故の中身で変わります。IPAの手引きは、個人情報の漏えいは個人情報保護委員会へ、犯罪性がある場合は警察へ、ウイルス感染や不正アクセスはIPAへ届け出る例を挙げています。ここでも公的な窓口の呼び名は「ウイルス」⁠な⁠の⁠で⁠、届出の書類では窓口の言葉に合わせます。

言葉をそろえたら、製品の選び方も変わるのか?

製品カタログの読み方が少し変わります。カタログにはウイルス対策、マルウェア対策、EDRなどの言葉が並びますが、言葉だけで範囲を決めつけず、何を検知し、検知の後に何ができるかを公式の仕様で見てください。

端末を守る製品の全体像はエンドポイントセキュリティの比較で、侵入後の検知と対応に重きを置く製品はEDRの製品比較で見られます。

なぜ会社が狙われるのかは犯人の儲け方から見た狙われ方に、対策全体の抜けの点検は情報セキュリティ対策の具体例一覧⁠にまとめています。

よくある質問

マルウェアとウイルスの違いは何ですか?

マルウェアは悪意のあるソフトウェアの総称です。ウイルスはその一種で、狭い意味では、ほかのプログラムに自分の複製を組み込んで増えるものを指します。日常では、マルウェア全体をウイルスと呼ぶこともあります。

ランサムウェアはウイルスですか?

厳密にはマルウェアの一種で、データを暗号化して対価を要求するものを指します。総務省の説明では、広い意味のウイルスに含めて呼ぶこともあるとされています。報告では「ランサムウェア」⁠と書くのが明確です。

ウイルス対策ソフトはマルウェアにも効きますか?

製品名や公的資料の呼び名に「ウイルス」⁠とあっても、狭い意味のウイルスだけを対象とするとは限りません。対象と検知の範囲は製品ごとに違うので、公式の仕様で確かめてください。どの製品でも検知が保証されるわけではありません。

社内の報告書ではどちらの言葉を使えばいいですか?

種類がわからない段階では「マルウェア感染の疑い」⁠とするのが無難です。種類がわかればランサムウェアなどの名前を足し、製品の画面に出た名前をそのまま添えます。

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