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COLUMN 1068 / サイバー攻撃の基本と最新動向

情報セキュリティポリシーとは?中小企業が形だけにしない作り方を解説

公開 2026.11.06文・ナギサコーポレーション

この記事の答え

  • 方針とルールをまとめた文書で、中小企業は1枚⁠と数ページから始められる
  • 大企業の写しは守れない項目が残り、形だけになりやすい
  • IPAの付録を編集し、自社診断の結果から守れることだけを書く
目次

情報セキュリティポリシーとは、会社が情報を守るための方針と、社員が従う行動のルールをまとめた文書です。中小企業なら、1枚⁠の基本方針と数ページのルールから始められます。

今日やることは、IPAの基本方針のサンプル(Word、1ページ)⁠を開き、社長と一緒に自社の言葉へ直すことです。立派な文書を整えるより先に、自社で実際に守れることだけを書く形を作ります。

この記事は公開情報を整理したものです。私たちが顧客の規程を作った事例ではありません。関連する記事は情報セキュリティの基礎のカテゴリ⁠にあります。

どんな文書で、どこまで作ればいい?

総務省の組織幹部向けの資料(2003〜2009年)⁠は⁠、情報セキュリティポリシーを、企業や組織が実施する対策の方針や行動指針と説明しています。構成は、基本方針、対策基準、実施内容の3階層が一般的だとしています。

中小企業が最初から3階層を揃える必要はありません。IPAの中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0⁠版(2026年3月27日公開)⁠の付録は、規模に合わせて段階を踏めるように並んでいます。

付録 分量 誰に向けたものか
付録2 情報セキュリティ基本方針(サンプル) 1ページ 社員、顧客、取引先
付録4 情報セキュリティハンドブック(ひな形) 17ページ 全社員
付録5 情報セキュリティ関連規程(サンプル) 59ページ 責任者、担当者

ガイドライン本編の順番も、基本方針、自社診断、ハンドブックが先です。59ページ⁠の規程はその次の段階で、本格的に取り組むときに使います。まず1枚の方針と、ハンドブックの必要な部分だけを残せば、数ページにできます。

大企業の規程を写すとなぜ形だけになる?

写した規程には、自社に当てはまらない項目と、実際にはできない項目が混ざります。「情報セキュリティ委員会が毎月審査する⁠」⁠と書いてあっても、そんな委員会がなければ守れません。守れない項目が残ると、社員は規程全体を読まなくなります。監査や取引先の確認で聞かれたときも、書いてあることと実態が違うと説明に困ります。

実態との差は数字にも表れています。IPAの2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査(4,191社)⁠で⁠は⁠、「対策をルール化し、従業員に明示している⁠」⁠に実施または一部実施と答えた企業は39.2%でした。OSやソフトウェアを最新にしているという回答の73.0%⁠と比べて、かなり低い数字です。

総務省の資料も、ポリシーを「絵に描いた餅」⁠にしないためには、幹部が率先して全社員に周知することが大切だとしています。誰かが作って棚に置いた時点で、形だけになり始めます。

どの順番で作ればいい?

6つ⁠の手順で、数ページのルールまで持っていきます。

1. 社長と30分で、避けたい事故を決める

第4.0版は、経営者が懸念する重大事故を念頭に、何が起こらないようにすべきかを考えるよう求めています。たとえば、金属部品の加工会社なら「預かった図面が外に出る」「受注データが消えて納期が守れない⁠」⁠の2つ⁠が挙がるかもしれません。書くことは、この2つ⁠を防ぐためのものに絞ります。

2. 基本方針を1枚にする

付録2を編集します。第4.0版は基本方針に決まった書き方はないとし、記載項目の例に、管理体制の整備、法令やガイドラインの順守、セキュリティ対策の実施、継続的改善を挙げています。事業の特徴や顧客の期待を考えて、経営者と連携して作ります。社長の名前で出す文書なので、社長が読んで言葉に違和感のないところまで直します。

3. 自社診断で、今の状態を見る

付録3の「5分⁠でできる!情報セキュリティ自社診断⁠」⁠の25項目⁠に答えます。実施している4点⁠、一部実施している2点⁠、実施していない0点⁠、わからないマイナス1点⁠で採点します。部署が多いなら部署ごとに書いてもらい、担当者が集計します。ここで「実施していない」「わからない」⁠が付いた項目が、ルールを書く候補です。

4. 全部ではなく、直す項目を選ぶ

一度に全部直そうとしないでください。手順1で決めた事故に関係する項目から、3〜5個⁠を選びます。第4.0版も、検討するときは従業員の意見を聞き、職場環境や業務に適した対策を決めるよう書いています。現場に「これなら毎日できるか」⁠を聞くのは、この段階です。

5. ハンドブックを編集して、書いたことだけ配る

付録4のひな形から、決めた対策の部分を残して編集します。ガイドラインの例では、バックアップの欄を「○○サーバー」のような例文から、「営業部ファイルサーバーの売買契約書ファイルを外付けHDDに毎週⁠」⁠と自社の具体に書き換えています。この粒度にすると、担当者が読んで何をすればよいかが分かります。

6. 配って、説明して、年に1回見直す

完成したら全従業員に配り、必要に応じて説明します。IPAのSECURITY ACTIONのよくある質問も、年に1回など定期的な自社診断を期待するとしています。点数が上がったか、守れなかった項目は何かを見て、ルールのほうを直すこともあります。

形だけにしないための書き方

  • 実際にやることだけを書き、できないことは「いつまでに」⁠と分けて残す
  • 「適切に」「速やかに」⁠で終わらせず、誰が、いつ、何をするかを書く
  • 例外のときに誰へ相談するかを1行書く
  • 事故に気づいたときの連絡先を最初のページに載せる

製造業なら何を足す?

事務所のひな形だけでは足りない部分があります。たとえば、図面を預かる加工会社なら、次のような項目を足すと現場に合います。

  • 紙の図面をどこに置き、いつ、どう捨てるか
  • 協力会社に図面を渡すときの方法と、秘密保持の約束の有無
  • 工場を見学する人が通る場所から、何が見えるか
  • 取引先ごとに決められた情報の扱いを、誰が把握しているか

取引先の要求も確認します。先の調査では、発注元から情報セキュリティの要請を受けた企業のうち79.6%⁠が「秘密保持のための措置」⁠を求められていました。秘密保持契約に書かれた約束を、ルールに反映しておきます。

委託先がある会社には、付録5についている委託先チェックリストのサンプルが使えます。

工場設備は別紙にする

第4.0版は工場設備や制御システムを対象外としています。SCS評価制度も、制御(OT)システムは直接の対象としていません。事務所のルールと混ぜると、どちらも守れなくなります。設備のUSBメモリや保守回線の扱いは、設備の担当者や保守会社と別紙で決めてください。

外に見せる必要はある?

基本方針は、社員だけでなく顧客や取引先にも伝えるものです。IPAのSECURITY ACTION⁠の二つ星は、自社診断を実施したうえで基本方針を策定し、外部に公開して宣言する仕組みです。よくある質問によると、自社診断の点数は何点でもかまいません。個人情報保護方針の公開は、基本方針の公開とはみなされません。

取引先への説明という点では、経済産業省のSCS評価制度⁠も見ておきます。委託元が委託先に適切な段階を提示し、実施状況を確認する使い方を想定した制度で、★3と★4は2026年度末頃の開始を目指すとされています。時期は変更の可能性があると書かれています。第4.0版はこの制度を受けて実践編を全面的に改訂しているので、今から作るルールは第4.0版を土台にするのが素直です。

先のIPAの調査では、ISMS取得済みの企業の73.9%が、発注元の要請で行った対策が取引につながったと答えています(未取得の企業は30.3%)⁠。回答者の実感を尋ねた数字なので、認証の効果を示すものとは言えません。取引先から認証を求められている会社は、ISMS・Pマーク取得支援ツールの比較で進め方を調べられます。

作ったあと、どう定着させる?

文書の次に必要なのは、社員が内容を知っている状態です。入社時と年1回⁠の説明を決めておきます。繰り返しの教育を自社で続けるのが難しければ、セキュリティ教育サービスの比較で外部の教材を探せます。自社のルールとして何が足りないかを見てほしい場合は、セキュリティコンサルティングの比較が入り口になります。

ルールに入れておきたい項目のうち、次の2つ⁠は別の記事で詳しく書いています。

紙の書類や社員の話まで含めて、何を対象にするのかを最初に確かめたいなら、情報セキュリティで守る範囲の整理⁠を先に読むと、手順1の話し合いが進めやすくなります。

よくある質問

情報セキュリティポリシーとは何ですか?

会社が実施する情報セキュリティ対策の方針や行動指針をまとめた文書です。一般に基本方針、対策基準、実施内容の3つ⁠の階層で構成されます。中小企業なら、1枚⁠の基本方針と、社員向けの数ページのルールから始められます。

中小企業が情報セキュリティポリシーを無料で作る方法はありますか?

IPAの中小企業の情報セキュリティ対策ガイドラインの付録に、基本方針のサンプル(1ページ)⁠、ハンドブックのひな形(17ページ)⁠、関連規程のサンプル(59ページ)⁠があり、ダウンロードして編集できます。

情報セキュリティ基本方針に何を書けばいいですか?

IPAのガイドライン第4.0版は、管理体制の整備、法令やガイドラインの順守、セキュリティ対策の実施、継続的改善などを記載項目の例に挙げています。決まった書き方はなく、事業の特徴や顧客の期待を踏まえて作ります。

個人情報保護方針があれば情報セキュリティポリシーは不要ですか?

別のものです。IPAのSECURITY ACTIONのよくある質問でも、個人情報保護方針を公開していても、情報セキュリティ基本方針を公開しているとはみなせないと説明されています。対象が個人情報に限られないためです。

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