PLCのセキュリティで守るものは、ラインを動かすプログラムと設定、そしてそれを書き換えられる経路です。PLCは機械やラインを決まった順序で動かす制御装置で、更新が難しい機器が少なくありません。だから機器の中だけでなく、周りの通信と作業の決まりで守ります。
今日やることは、PLCごとに4つの欄を埋めた一覧を作ることです。
- どのラインのどの盤にあるか(メーカー名と型番も)
- どの機器とつながっているか(操作パネル、パソコン、モデムなど)
- プログラムのバックアップがどこにあり、最後にいつ取ったか
- 外から接続する人がいるか(保守会社の名前と接続の方法)
埋まらない欄が、次に手をつける場所です。
PLCのセキュリティで、何が起きると困る?
ランサムウェアでパソコンが暗号化される話とは、困り方が少し違います。米NISTのOTセキュリティ指針 SP 800-82 Rev.3の本文は、OTを物理の世界を制御するものと位置づけています。主なリスクには、人命、設備、生産の損失や環境への影響が並びます。
海外の注意喚起では、実際にPLCが狙われた例が報告されています。米CISAなどの共同注意喚起 AA26-097Aは2026年4月7日に公開され、7月22日に更新されました。インターネットにつながったPLCを狙う活動について、複数メーカーの機器が対象になったと書いています。報告された内容は、次の2つです。
- PLCのプロジェクトファイルへの不正な操作
- 操作パネルや監視画面に表示されるデータの操作
一部の例では、業務の停止や金銭の損失につながったとされています。対象の業種は政府機関、上下水道、エネルギーで、日本の工場の話ではありません。それでも、書かれている対策は工場のPLCにも当てはめて考えられます。
国内の話では、経済産業省が2025年4月に出した中小製造業向けの解説書の案内が、ネットワークの接続に乏しい工場でも不正侵入等による攻撃の可能性があると指摘しています。「つないでいないから関係ない」と決めずに、一覧で確かめる理由はここにあります。
更新できないPLCは、どう守る?
機器の中に手を入れられないなら、周りで補います。NISTの指針は、OTシステムの寿命が20年を超えることがあり、更新できない機器があると述べています。そのうえで、対策が機器に入らない場合は代替の対策を考えるよう示しています。PLCにウイルス対策ソフトが入らない例では、通信を検査して止めるファイアウォールを例に挙げています。
現場で進める順番は、次のとおりです。
| 順番 |
やること |
止まる可能性 |
| 1 |
インターネットとの接続を調べて外す |
保守の方法に影響 |
| 2 |
初期パスワードと使っていないアカウントを直す |
機器によって確認が要る |
| 3 |
プログラムのバックアップを取り、外して保管する |
機器によって確認が要る |
| 4 |
事務系と工場のネットワークを分ける |
配線変更時に影響 |
| 5 |
PLCに届く通信を必要な相手だけに絞る |
設定を誤ると影響 |
| 6 |
遠隔保守の入口を1つにする |
保守会社と調整 |
この順番の土台は、CISAなどが2025年5月に出したOTの基本対策です。公衆インターネットからOTの接続を外す、初期パスワードを変える、遠隔接続を守る、ITとOTのネットワークを分ける、手動で動かす力を保つ、を挙げています。順番は、費用と手間が少ないものから並べた私たちの整理です。
設定を変える前に
PLCやスイッチの設定変更は、設備メーカーや制御盤を作った会社に先に相談します。CISAの注意喚起も、防御の措置を入れる前に影響の分析とリスク評価を行うよう求めています。保守契約の条件に触れる作業がないかも確かめます。
ネットワークはどこで分ける?
事務系のネットワークと工場のネットワークの間に、境目を1か所作ります。CISAの基本対策は、重要なシステムを分け、生産のデータを事務系へ渡すために緩衝の区画(DMZ)を設ける形を示しています。
小さな工場で一度に全部を組み直す必要はありません。経済産業省の工場向けガイドラインは、業務と守る対象を整理し、ゾーンを決め、対策に落とす手順を示しています。次の3つに分けて考えると、話を始めやすくなります。
- 事務系:メール、受発注、インターネットを見るパソコン
- 橋渡し:生産データを渡すサーバー、遠隔保守の入口
- 制御系:PLC、操作パネル、設定用のパソコン
決めるのは、この区画の間を通してよい通信です。「生産実績を橋渡しのサーバーへ送る」のように目的と向きを1行で書きます。書けない通信は、止める候補として設備メーカーに確かめます。境目に置く機器はファイアウォール機器の製品比較で探せますが、工場の温度や盤の寸法に合うかは別に確かめます。
通信を絞った後は、普段と違う通信に気づく仕組みが次の課題です。ライン全体の通信を監視するならNDRの製品比較、工場向けの方式から見るならOTセキュリティの製品比較で調べられます。導入の前に、夜間の警告を誰が見るかを決めておきます。
遠隔保守はどう扱う?
入口を1つにして、普段は閉じておき、使ったら記録を残します。AA26-097Aは、外から内へ開いた口をなくし、すべての接続を安全なゲートウェイ(踏み台)を通して管理するよう求めています。外部からの接続には多要素認証を挙げています。
見落としやすいのが、携帯回線のモデムです。同じ注意喚起は2026年7月の更新で、遠隔接続に使うモデムの強い認証、更新、ログの確認を求めています。導入の時に設備メーカーが付けたものが、盤の中で動き続けている場合があります。一覧を作るときは、盤の扉を開けて現物で確かめます。
現場の手順は、次の形に落とし込めます。
- 保守会社が、作業の日時、対象の機器、作業者を事前に連絡する
- 工場の担当者が、作業の時間だけ入口を開ける
- 作業者ごとのアカウントと多要素認証で接続する
- 接続先は対象の機器だけにする
- 終わったら入口を閉じ、変更点の報告を受ける
- 変更後のプログラムをバックアップとして保管する
CISAの基本対策は、対象の機器と役割に応じて権限を最小にすること、使っていないアカウントを止めることも挙げています。退職した作業者のアカウントが残っていないか、保守会社に年に1回確かめます。
たとえば、プレス加工のラインで、設備メーカーが不具合の時に携帯回線のモデムから接続している場合を考えます。夜間の復旧を外部に頼っているなら、モデムをすぐに外すと復旧が遅れます。そこで、接続の入口を切り替える日を設備メーカーと決め、それまでは使わない時間に電源を切る運用で始める、という段階を踏めます。緊急時に誰が入口を開けるかも、当番表に書いておきます。
PLC本体で、現場がすぐできることは?
運転中にプログラムを書き換えにくくすることと、戻せるようにすることです。AA26-097Aは、物理のモードスイッチがある機器では、スイッチをRUNの位置にして遠隔からの変更を防ぐよう示しています。書き込む時だけ切り替え、終わったらすぐ戻します。ただし切り替えには注意があり、切り替える前にプロジェクトファイルを確かめるよう書かれています。
対応は機種ごとに違います。ソフトウェア側で書き込みを保護する機種もあるので、手元の型番のマニュアルとメーカーの資料で確かめます。
バックアップは、取るだけでは足りません。同じ注意喚起は、PLCのロジックと設定のバックアップを作って試すこと、オフラインで保管すること、復元する前に不正なロジックが混じっていないか確かめることを挙げています。現場の決まりにすると、次の3点です。
- プログラムを変更するたびに、日付と変更者を付けて保管する
- 保管先は工場のネットワークから外し、鍵のかかる場所に置く
- 年に1回、試験機か保全の日に、実際に戻せるかを試す
止まった時のために、何を決めておく?
手で動かせる範囲と、再開の手順を決めておきます。CISAの基本対策は、手動の運転に戻せる力を日頃から試すよう求めています。全ラインで難しければ、止まると納品に一番響くラインから始めます。
紙1枚に書くのは、次の項目です。
- ネットワークを切る判断をする人と、その人が不在のときの代わり
- 設備メーカーと保守会社の緊急連絡先
- 手で動かせる工程と、動かしてはいけない工程
- プログラムを戻す手順と、バックアップの保管場所
全体の話として工場の分担を決めるなら情シスと工場の分担方法、担当者の学び方は工場の担当者が学ぶ順番と公的な研修に書きました。実際に工場が止まった例の原因は公式発表で確かめた工場の停止と原因で整理しています。工場のセキュリティの記事は工場とIoTのセキュリティにまとめています。