EDRは端末を対象に検知と対応を行い、XDRは端末に加えてメールやネットワーク、クラウド、IDの情報を横断して検知と対応を行います。切り替えの時期を決めるのは機能表の差ではなく、「アラートを見て判断する人が、どこまで見られるか」です。
今日やることは、この3か月に出たアラートのうち、調査に別の画面や別の会社への問い合わせが必要になったものを数えることです。ほとんど無いなら、切り替えを急ぐ理由はまだありません。そもそもアラートを誰も見ていないなら、先に決めるのは製品ではなく担当です。
この記事は公開情報を整理したものです。私たちが各製品を導入や検証したわけではありません。エンドポイント対策のカテゴリから全体を見られます。
機能の差を短く言うと?
トレンドマイクロのEDRとXDRの違いの解説と、MicrosoftのXDRの解説をもとに整理すると、次のようになります。
| 比べる点 |
EDR |
XDR |
| 見る範囲 |
パソコン、サーバーなどの端末 |
端末に加え、メール、ネットワーク、クラウド、IDなど |
| 集める情報 |
端末のログ、プロセスの動き |
複数の製品から集めて関連づける |
| 自動の対応 |
端末の隔離など |
通信の遮断、認証情報の無効化など |
Microsoftは、EDRはエンドポイントに限定されており、ネットワーク、クラウド、IDを完全には見られないことを欠点として挙げています。ただし、これらはXDRを売る側の説明でもあるので、そのまま自社に当てはまるとは考えないでください。
実際の製品では、EDRとXDRの境目は動いています。たとえばトレンドマイクロでは、Apex One SaaSのEndpoint Sensorの提供が2025年6月30日に終わり、EDRの機能はXDR Endpoint Sensorに統合されました。製品名がXDRでも、実際に接続しているのは端末だけ、という契約も起こり得ます。名前ではなく、どの領域の情報がつながっているかで見てください。
運用の面では何が変わるのか?
EDRの運用:端末の出来事を判断する
EDRのアラートに答える人は、「この端末で起きたことは正常か」を判断します。端末の持ち主に聞けば分かることも多く、兼任の担当者でも手順があれば進められる部分があります。トレンドマイクロの解説でも、EDRの自動対応は端末中心で、調査や判断に手動の対応が必要になる場合があるとされています。
XDRの運用:領域をまたいで判断する
XDRのアラートに答える人は、「このメールと、このログインと、この端末の動きは、一続きの攻撃か」を判断します。情報は1つの画面にまとまっても、判断には、メールの仕組みや社内のアカウントの使われ方の知識が要ります。
通信の遮断や認証情報の無効化も、会社全体に影響します。正規の社員のアカウントを止めれば、その人の仕事も止まります。誰がその権限を持つのかは、EDRのときより広い範囲で決める必要があります。
負担は本当に減るのか?
Microsoftは、XDRはアラート疲れを軽減すると説明しています。関連するアラートを1つにまとめれば、見る件数は減る可能性があります。一方で、つなぐ領域を増やせば、これまで見ていなかった種類の通知が新しく届きます。
どちらが大きいかは環境で変わるので、断定はできません。試用のあいだに、人が判断した件数と1件にかかった時間を数えてください。人を減らす目的で切り替えるなら、この数字が根拠になります。
どの段階で切り替えるか?
次の4つを順に確かめます。上から順に当てはまるほど、切り替えを検討する時期です。
1. EDRのアラートを毎回処理できている
未処理のアラートが積み上がっている状態で範囲を広げても、見ない通知が増えるだけです。処理できていないなら、先に監視を任せるMDRサービスの比較を見て、人の問題を片づけてください。比べる項目はEDR製品の比較で見る7項目にまとめました。
2. 調査のたびに端末の外を探している
「怪しい端末はあるが、原因のメールは別の管理画面」「ログインの記録は別の会社に問い合わせ」という状況が続いていれば、XDRの利点が働く場面です。
警察庁の令和7年の情勢報告では、ランサムウェアの被害組織へのアンケートで、侵入経路のVPN機器が6割以上を占めています。端末で異常を見つけたとき、VPN機器やログインの記録までたどれる状態かどうかを確かめてください。ただし、どのネットワーク機器やVPN機器をつなげるかは製品によって違うので、今使っている機種の名前を出して聞きます。
3. つなぎたい製品が同じ会社か、連携できる
同じメーカーのメール対策やネットワーク対策とつなぐ形の製品があります。たとえば、Microsoft Defender XDRはエンドポイント、ID、電子メール、アプリケーションにまたがる製品です。Trend MicroのWorry-Free XDRは、エンドポイントとメールを組み合わせた中小企業向けの構成です。
今のメールの仕組みやファイアウォールを替えずにつなげるのか、買い替えが要るのかで、費用は大きく変わります。乗り換えの範囲は、最初に確かめてください。
4. 通知を受ける相手が決まっている
XDRで全社的な影響のある対応をする前に、社長、総務、システムの保守会社のそれぞれに誰が連絡するかを決めます。中小企業向けには、MSP(運用を請け負う事業者)を通じて24時間365日の検出と応答のサービスを提供するWorry-Free Managed XDRのような形もあります。任せる場合も、止める判断の連絡を受ける人は社内に要ります。
製造業で切り替えを考えるなら?
たとえば、複数の工場や拠点があり、拠点どうしをVPNでつないでいる製造業を考えます。端末のアラートだけでは、どの拠点から入ってきたのかをたどるのに時間がかかる場合があり、ネットワーク側の情報が調査の助けになります。
ただしXDRの解説でOTやIoTも対象に挙げるものがあっても、工場の制御機器をそのままつなげるとは限りません。制御ネットワークの情報を取るときは、設備の担当と機器のメーカーを入れて、停止の影響を確かめてから範囲を決めてください。事務所のメールと端末から始め、工場は別の計画にするのが無理のない順番です。
切り替えない判断もある
EDRと監視の外注で調査が回っていて、端末の外の情報も外注先が取り寄せてくれるなら、今は切り替えなくても困らないことがあります。取引先の要請が理由の場合も、IPAのSCS評価制度のよくある質問では、特定の製品の導入を求めるものではないとしています。★3と★4は2027年3月の受付開始に向けて準備中なので、要求事項を読んでから必要な範囲を決めても遅くはありません。
切り替えると決めた場合も、入口の守りはなくなりません。EPPの役割と更新管理も一緒に見直してください。製品の候補はXDR製品の比較とEDR製品の比較で確かめられます。トレンドマイクロの製品を使っている場合は、Apex Oneの製品形態と移行の期限が切り替えの時期に関わります。