EPP(Endpoint Protection Platform)とは、パソコンやサーバーなどの端末で、マルウェアの感染といった攻撃を事前に防ぐ法人向けの製品のことです。新しい対策が増えた今も、入口で減らす役割は残っています。ただし、入っているだけでは役に立たず、更新されていることが前提です。
今日やることは、管理画面と端末の台帳を見比べて、次の2つの数を出すことです。
- 台帳にあるのに、管理画面に出てこない端末の数
- 定義ファイルの更新が、しばらく止まっている端末の数
両方が0でなければ、新しい製品を調べるより先に、この端末を直すほうが効果を見込みやすい対策です。台帳が無い会社は、IT資産管理ツールの比較を入口にしてください。
EPPは何をしているのか?
トレンドマイクロのEPP、EDR、XDRの解説によると、EPPの主な目的は攻撃を事前に防ぐことです。見つけ方は、相手が既知か未知かで分かれます。
| 相手 |
主な技術 |
向き不向き |
| 既知のマルウェア |
パターンマッチング |
正確だが、未登録のものには向かない |
| 未知のマルウェア |
機械学習、ふるまい検知、サンドボックス分析 |
新種や亜種を見つけるために使う |
昔ながらのウイルス対策は、パターンとの照合が中心でした。今のEPPはそこに複数の技術を重ねています。製品のページで「NGAV」と書かれているものも、同じ流れにあります。法人向けセキュリティソフトの比較を見ると、EPP中心のプランと、EDRまで含むプランがあることが分かります。
EDRがあるのに、なぜEPPも要るのか?
理由は大きく2つです。
役割が違う
同じトレンドマイクロの解説では、EDRはサイバー攻撃を「事前に防ぐ」のではなく、痕跡を記録して攻撃を可視化し、影響範囲や原因を調べる役割だとしています。EPPで防げない攻撃をEDRで防げるという誤解があった、という指摘もあります。
IPAの中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第4.0版でも、EDRは端末に侵入した攻撃を検出して管理者に通知する技術と説明されています。侵入を前提にした道具なので、入口の守りとは別のものです。
入口を外すと、機能も欠ける
MicrosoftのブロックモードのEDRの文書に、分かりやすい例があります。Microsoft Defenderウイルス対策がパッシブモードのとき、この機能は使える保護のすべてを提供できず、オンアクセススキャンを含むリアルタイム保護は使えないと書かれています。
これはMicrosoftの製品の話ですが、「検知と対応の機能は、ウイルス対策の代わりではない」という点は、他社の製品を検討するときにも確かめる価値があります。製品によっては、1つのエージェントに両方が入っています。EDRの見積もりを見るときは、ウイルス対策の機能が含まれるのかを聞いてください。
EPPだけで足りるのか?
足りません。ここは正直に書いておきます。
警察庁の令和7年の情勢報告によると、令和7年のランサムウェアの被害報告は226件でした。被害企業は中小企業が約6割、業種では製造業が約4割です。被害組織へのアンケートでは、侵入経路のVPN機器が6割以上を占めています。
つまり、最初の入口が端末のメールやファイルとは限りません。EPPは端末の上で起きることに対応する製品なので、VPN機器の脆弱性そのものは直せません。
IPAの情報セキュリティ10大脅威2026でも、組織の1位はランサム攻撃による被害、4位はシステムの脆弱性を悪用した攻撃です。EPPは土台の一つであって、機器の更新、パスワードの管理、バックアップとセットで考えます。IPAのガイドライン第4.0版が挙げる情報セキュリティ6か条も、OSとソフトの更新、ウイルス対策ソフトの導入、パスワードの強化、共有設定の見直し、バックアップ、手口を知ることの6つです。
侵入後の検知まで必要かどうかは、EDR製品の比較で見る7項目と、EDR製品の比較で考えてください。
更新管理で何を見るのか?
EPPの弱点として、トレンドマイクロの解説は、端末が最新のパターンファイルに更新されていないと検出をすり抜ける場合があると挙げています。IPAのガイドラインも、定義ファイルを常に最新にするよう求めています。担当者が見るのは、次の4点です。
定義ファイルとプログラム
更新は1種類ではありません。Microsoft Defenderウイルス対策の場合、更新の説明によると、セキュリティインテリジェンス(定義)の更新のほかに、月次のプラットフォーム更新があります。定義だけが新しく、プログラム本体が古いという状態は起こり得ます。管理画面でどちらも確かめられるかを見てください。
OSのサポート
Windows 10は2025年10月14日にサポートが終了し、それ以降はセキュリティ更新プログラムを受け取れなくなりました。EPPの製品側にも、対応するOSの期限があります。Apex Oneの製品形態とサポート期限は、その具体例です。
契約の期限
期限が切れると、守りが止まることがあります。たとえばトレンドマイクロの法人用シリアルの案内では、有効期間が切れるとすべての機能が無効になると説明されています。契約の期限は担当者個人の予定表だけでなく、複数の人が見られる場所に置いてください。
管理の外にある端末
個人向け製品を入れた端末、退職者のパソコン、倉庫に眠っていた予備機は、管理画面に出てきません。Windows 10と11では、他社のウイルス対策製品を主に使うと、Microsoft Defenderウイルス対策は自動で無効モードになるとされています。つまり、他社製品の契約が切れた端末では、その製品の状態を確かめないと守りの有無が分かりません。
確かめ方は、端末の台帳に「入れた製品」「契約の期限」「管理画面での最終確認日」の3列を足すだけでも始められます。専用の道具が無くても、月に1回この表と管理画面を見比べれば、抜けている端末に気づけます。
製造業の現場の端末はどうする?
たとえば、工場で検査装置につないだパソコンや、複数の人で使う現場の端末を考えます。こうした端末は、インターネットに出ていないために定義ファイルの更新が自動で届かないことがあり、担当も決まっていないことが多い場所です。
見るのは次の3つです。
- 製品がその環境に対応しているか(閉じたネットワークでの更新の方法があるか)
- 誰が、どの頻度で更新を確かめるか
- 装置のメーカーが、セキュリティ製品の導入を認めているか
検査装置や制御用の端末では、セキュリティ製品の導入そのものに、メーカーの確認が要ることがあります。工場の端末の保護は、事務所のパソコンと同じ手順で決めず、装置のメーカーへの確認から始めてください。
買い替えを考える前に
更新がきちんと回っているEPPがある会社は、次の製品を急ぐ前に、端末の外の入口を点検する余地があります。端末の外まで見たくなったらXDRとEDRの違い、エンドポイント全体の整理はエンドポイント対策のカテゴリを読んでください。